凌駕が決め手




お目汚し、失礼いたします。



ここ数日、マスコミを賑わせている二つのニュースがございます。
一つは元民主党代表、小沢一郎氏と現代表、野田佳彦氏の
消費税増税をめぐっての対立問題。
もう一つは俳優、高嶋政伸氏とその妻でモデル・女優の美元氏との離婚裁判でございます。
そしてこの二つのニュースにおいてクローズアップされている共通の図式がございます。
それは、お互いに落としどころを探そうとする姿勢が見られないということでございます。



今日、野田氏と小沢氏の2回目の会談がおこなわれたようでございますが
消費税増税を何としても押し切ろうとする野田総理と
それはやるべきことをやってからというのが筋だとする小沢元代表との間に
歩み寄る余地はどうやら無かったようでございます。
そして同様に、高嶋・美元の離婚裁判でも
両者ともに自らの主張を曲げることは無く、平行線のまま進んでいきそうな雲行きでございます。



この高嶋・美元の離婚裁判ですが
価値観の違いや性格の不一致を理由に夫、高嶋政伸氏が訴えを起こしたようで
とにかく妻、美元と別れたい。
芸能生活を投げ打ってでもいいから、とにかく別れたいとのこと。
反対に美元氏は、絶対に別れたくない、添い遂げたい。
旦那のことは今も愛している、別れたくないと申しております。



こんなことを言われるのは男冥利に尽きるといえましょう。
しかし価値観や性格の合わない女性からさようなことを言われても迷惑なだけでございます。
しかも聞くところによれば、この美元氏浪費癖があって癇癪持ちの性格
夫に暴力を振るい、ストーカー行為をはたらいたそうでございまして
そういったことから恐怖を感じた高嶋氏、半ばノイローゼになってしまったようでございます。
そんな女性から別れたくないと言われれば、男冥利などと暢気なことなど言ってはおられません。



かくなるうえは高嶋氏、最近の離婚裁判の潮流とも言える「 破綻主義 」にのっとり
野放図で支離滅裂、過激で異常な性格破綻者と化し
美元氏との夫婦関係を徹底的に崩壊させるよりほか、道はありますまい。
深酒やヘビースモーキングをこよなく愛し、パチ屋と競馬場に足しげく通い
ベッドの上では思わず目を背けたくなるような変態プレイに耽溺し
美元氏に一里四方まで響き渡るほどの大音声で悲鳴を上げさせるような
鬼畜変態魔人になりきるよりいたしかたございません。



そうやって実質的に夫婦生活を完膚なきまでに破綻させ
改めて離婚の申し立てをなさってはいかがでございましょうか。
もっとも、そうなるともはや「 芸能生活を投げ打って 」どころではなく
「 人生を投げ打って 」ということになってしまいましょうが
これも運命だと思ってあきらめなさいまし。



化け物を退治するには、その化け物を凌駕するような化け物に
自分も変身しなければならないのでございます.....






街角の羊




お目汚し、失礼いたします。



先人たちは何気ない路傍の花に目を留め
詩歌を詠んだりしたものでございますが
私のようにコンクリートジャングルに覆われた都会に住む人間には
そのような風雅なおこないは縁の無いものと言えましょう。
その代わり、遊び心や諧謔心に富んだものを見て楽しめる場合がございます。



一週間ほど前、お得意様の会社を訪問しての帰り道
近辺の駅前を歩いておりましたら
ビルの壁際に何やら縫いぐるみらしき物が置かれてあるのを目にいたしました。
よく見ると羊の縫いぐるみでございます。
羊の縫いぐるみの下には、大きな枕が置いてあり
羊はちょうどその枕の上に横たわるような格好で
置かれてあったのでございます。



縫いぐるみも枕も、染みのついた小汚いものでございました。
しかし、人が眠れないときに( 一匹…二匹…三匹… )と数える羊が
街なかで堂々と枕を敷いて寝ているような姿に私
柔らかいユーモアを感じ、思わず微笑んでしまいました。
どなたがこのようなものをここへ置いたのでございましょう。
それとも、元から捨ててあった羊の縫いぐるみと枕を
通りすがりの人間がいたずら気分で
このように置き直したのでございましょうか。



もちろん客観的に言えば、これは不法投棄の一種でございます。
今ごろはとっくに市の清掃局の職員に撤去されておりましょうが
私にとっては実に癒される光景でございました。
何やら自分もその枕に頭を置き
羊に添い寝してみたくなったほどでございます。



普段何気なく見過ごしている街の風景のなかに
ふとした拍子で何かおもしろいものをみつける場合がございます。
そしてそこから得られるものは癒しばかりとは限らないでしょう。
パワーやエネルギーを与えてくれる
活力源となる場合もあるはずでございます。



今度、私が街を歩いているときには
枕の上で眠っている羊の縫いぐるみではなく
ベッドに横たわったダッチワイフを見つけてみたいものでございます。
そのときは私もそのベッドに横たわり
ダッチワイフと添い寝はもちろん
ハメ寝もすることにいたしましょう.....






傘がない




お目汚し、失礼いたします。



15年前に起きた殺人事件の被告で
有罪で無期懲役となっていた外国人男性が釈放されております。
最高裁で上告棄却の決定が下されて有罪が確定していたのですが
弁護側の再審請求が先日認められたとのこと。
この事件、「 東電OL殺人事件 」という名で世間の耳目を集めておりましたが
再審請求が認められた理由は、検察側の杜撰とも言えるような
証拠品の提出・開示の手法にあったようでございまして
事件の概要と再審開始の決定が大きく報道されておりました。



何の罪も無い人間が無期懲役の判決を下されて投獄されるような事態が
回避されるのは実に喜ばしいことでございます。
しかし今の私にとって一番重要なことは
今月分の支払いをどうするかということでございます。
確かに売り上げは出ましたが、商売をするには先立つものが必要でございまして
商売を続けていくには信用が不可欠でございます。
そして今月分の売り上げ代金を回収できるのは再来月でございまして
その前に仕入先に対して支払いを済ませなければなりません。
さもないと信用を失ってしまいます。
ですが、その支払い分に宛てるような金銭的余力が私にはございません。



こういったことに頭を悩ませる経営者や商店主は私ばかりではありますまい。
極端な場合、蒸発や自殺も視野に入れている
深刻な状況に陥っているかたもおられましょう。
そういったことに悩み、苦しんでいる人がたまたまテレビやラジオのニュースで
「 再審開始決定、釈放オッケー、ばんざ~い 」いう報せを耳にして
何か朗らかな気分になれるのでございましょうか。
はっきり申し上げて、せいぜい「 だから何 」と思うだけでございましょう。



それにこの事件、まだ真犯人は捕まっていないばかりか明らかにもなっておりません。
しかもとりあえず釈放されたものの、この被告の外国人は入管難民法違反で有罪
東京入国管理局へ送致され本国へ強制送還でございます。
そして歓呼の声に迎えられつつ本国へ帰った彼を待ち受けているのは
異国で別の女性と肉体関係を持っていたことについての妻による糾弾、修羅場でございましょう。
テレビに映っている彼の奥様は実ににこやかな表情で
今回の再審決定を喜んでいるようでございましたが
胸のうちでは般若が牙を研いでいるのではないでしょうか。



ともあれ私は、親類に頭を下げてカネの無心をするよりいたしかたないようでございます。
某ニュース番組で以前プロレスの生中継のアナウンサーをやっていたニュースキャスターと
ノンフィクション作家が鹿爪らしい口調で今回の再審決定について語り合い
この事件について本を書いていたその作家は、ドヤ顔で御高説をのたまっておられましたが
これからその本はもっと売れて大増刷、印税もシコタマ入ってくることでございましょう。
実にけっこうなことでございます.....






どこでもゲーセン




お目汚し、失礼いたします。



一週間ほど前のことでございます。
昼過ぎにお得意様へ車で納品を済ませたあと
事務所へ戻る前に、とあるスーパーマーケットへ寄りました。
そのスーパーは、店舗と同じ敷地に駐車場が併設してあるのですが
店舗の屋上も駐車場になっております。
併設の駐車場が込んでいるのを見た私は
屋上の駐車場の方へ向けて傾斜路を車でのぼりました。



屋上の方は下の駐車場と比べると、廃墟といってもいいほど
停めてある車の数は少なぅございます。
そこへ車を停めた私は、ペントハウスの壁際に置かれてある自動販売機で
缶コーヒーを買って飲みました。



その自動販売機から少し離れた位置に、スマホをいじっている
20代後半と思しき男性が壁にもたれて立っておりました。
なにやらモバイルゲームに熱中しているらしく
スマホからはしきりにBGMやSEの類が流れておりましたが
それがまたボリュームがMAXの状態ではないかと思われるほど
大きなものでございまして、しかも「 HA!」とか「 HO!」とか
「 ズンドコドコドコドン! HEY!」とかいう
ラテン系のノリでございます。



男性は見たところ、ネクタイを締めたキチンとした身なりの
サラリーマン風の若い衆でございます。
どんなゲームをやっているのか、激しく興味をそそられた私は
彼のスマホの画面を覗いてみたくなりました。
しかし黙ってこっそり近づき、他人の携帯電話の画面を盗み見るのは
罪悪感がございますし、盗み見がばれたらトラブルになるかもしれません。
かといって50過ぎのオッサンが

「 もしもし、そこの若い衆。お楽しみのところ申し訳ないが
 そのゲーム、私めにもちょいと見せてはくれますまいか?」

と声をかけるのも痛々しきこと。



ならばそのゲームのBGMやSEにあわせて
「 HA!」「 HO!」「 ズンドコドコドコドン!」と踊りながら近づけば
目立たずさりげなく盗み見ることができるのでは? と思った私
SEにあわせて「 HA!」と右手を振り上げようとした時
何を思ったのかその若い衆、突然ゲームを終了させ
スマホをポケットに入れると駐車場に置いてある
白いライトバンの方へ歩いていきました。
そしてそのライトバンに乗って去っていったのでございます。



たぶん彼は外回りの営業部員で、サボっていたか
もしくは時間待ちをしていたのでございましょう。
しかし頭の古い私が思うに、ひと昔前ならそういった時間つぶしは
喫茶店でコーヒーを飲んだり、書店で立ち読みをするというのが
定番だったはずでございます。
ところが今やドラえもんの道具のごとく
スイッチ一つでそこがアミューズメントスペースになってしまうような
便利なものがございます。
それゆえ、その仮想のアミューズメントスペースで時間をつぶすのが
最近のトレンドとなっているのかもしれません。
なにやら隔世の感を覚えた次第でございます.....






甘く危険な香り




お目汚し、失礼いたします。



私が社会人になってから二年目のことでございます。
当時勤めていた会社の営業部に、とある女子社員がおりました。
私より一年先輩で所謂「 クールビューティー 」と申しましょうか
仕事はよくできる上に容姿端麗、まさに才色兼備という女性でございました。



ところが、それだけスキの無い女性だったにもかかわらず
ただ一つ、難点と申しましょうか「 腋臭 」がスゴイのでございます。
私は別の部署で働いておりましたゆえ、しょっちゅう顔を合わせるわけではないのですが
たまに用事で話をしたり社内ですれ違ったりすると
味噌が腐ってそのまま乾燥してしまったような猛烈なニオイが私の鼻をつくのでございます。



こんなにカッコイイ女性なのに、なぜ腋臭がひどいのだろう。
本人は気づいているのだろうか。
回りの人間は何も言わないのだろうか。
ひょっとして私の幻臭か錯覚なのだろうか。
しかし彼女の近くにいると、むさ苦しいオッサンのようなニオイが
確かに漂ってくるのでございます。



そんなある日、ちょっとしたトラブルが私の部署と彼女の部署との間で起こりました。
原因は彼女の部署内部における連絡不行き届きだったようで
こじれることも無くじきに解決した些細なトラブルだったのですが
その件に関する担当者は誰あろう、この私と「 クールビューティー 」の彼女でございました。



たいしたトラブルでもなかったので私の方はそれっきり忘れておりましたが
数日後、社内で彼女と顔を合わせた際
彼女の方から「 先日はすみませんでした 」と話しかけてきて
私の方も「 いえいえ、どういたしまして 」と返答し
それで万事普段どおりの日常に戻るはずでございました。
ところがちょうどその時、彼女の直接の上司にあたる係長の男性が
そばを通りかかったのでございます。



私に謝っているクールビューティーの姿を見たその係長は
彼女が謝り終えると、此度のトラブルの詳細を私に向かって説明いたしました。
曰く、彼女にその係長が与えた指示があとで変更となり
そのことを係長が彼女に伝えていなかったため
私の部署との間に事務処理上の齟齬が生じたとのこと。



私は了解したことを申し上げ
事情説明をしてくれたことに対する礼をその係長に述べると、その場を立ち去りました。
そのときも彼女の体からは例の腋臭が立ち昇っておりましたが
同時に私の頭にはイヤラシイ想像が立ち昇っておりました。



彼女の腋臭の原因は、あの係長ではないのか?
二人の間には肉体関係があり
汗や垢、体液などを通してあの係長の腋臭が彼女の体に「 伝染った 」のではないか?
彼女を庇い立てするかのように
自分のミスを曝け出して事情説明をしたあの係長の姿に
何やら不自然なものを感じて、さような疑いを抱いた私でしたが
すぐにそれはありえないと否定いたしました。



彼女のような「 クールビューティー 」が情事の後に入浴もせず出勤するとは思えません。
それにあの係長の体からは例の腋臭はこれっぽっちも臭わなかったのでございます。
しかしわざわざヒラ社員の私を前にして、ああまでして彼女を守るような態度を取るのは
何かあるはずでございます。



ところが、その係長、それ以降も社内で私と会うたびに
先のトラブルで迷惑をかけたことを詫びてまいるようになりました。
もうすでに片付いた話であり、こちらとしても何のわだかまりも無い一件だというのに
何度も何度も詫びてくるのでございます。そして

「 許してくれ 」
「 本当にすまなかった 」
「 すべては俺のミスが原因だ 」
「 君が望むならどんな仕打ちも甘んじて受けよう 」
「 悪いのは彼女じゃない。責めるなら俺を存分に責めてくれ 」

と再三にわたって聞かされるにおよび、私が何かあるはずだと思っていたその「 何か 」とは
私が想像していたものとはかなり毛色の違ったものではないかという気がしてまいりまして
何やら危険なニオイを感じ取った私は以後、できるだけその係長を避けるようにいたしました。



今思うに、それが自分の部下に対するその係長なりの気遣いだったのかもしれませんが
しかし当時の私には、その係長にはある種の特殊な性癖があって
私に対してその性癖を満たして欲しいとせがんでいるように感じられました。
そしてこれ以上深入りするのはアブないと自分に言い聞かせたのでございます。



そういうわけで私がその係長の身体に蚯蚓腫れを作ったり
ボールギャグを噛ませたりするような関係に陥ることは回避できました。
しかし結局、クールビューティーの腋臭の正体は摑めずじまいとなり
今ではあの奇怪な腋臭のニオイよりも
係長のくどいまでの謝罪の声が耳に残るようになってしまった次第でございます.....






未決厨




お目汚し、失礼いたします。



一昨日の日曜日、書籍の整理をしておりました。
昔読んだ単行本や文庫本で、もう二度と読むことは無いだろう
と思われるものをおもいきって処分し
売れそうなものは古本の買取店に持って行こう
と思ったのでございます。



ところが、いざ整理作業を始めたものの遅々として進みません。
押入れの中に眠っていた本を一冊一冊チェックしていると
この本はまた最初から読み直してみるべきじゃないかとか
これは何か資料として役に立つのではないかとかいった
作品的な価値について考え込んでしまい
そればかりか、この作家のこの作品は希少価値がありそうだから
捨てずに持っていればあとでレア物として高く売れるのではないか
といった金銭的価値にまで思いが及び
決断がなかなかできないのでございます。



そしてたまたま手に取った本の表紙をふと見てみたら
若いころに読んだ胡桃沢耕史氏の「 六十年目の密使 」。
あの切ないラストシーンが思い出され
何やら妙にシンミリしてしまいました。
それと同時に、部屋中に広げた文庫本や単行本の山が
無性にいとおしく感じられ
いったい自分は何をやっているのだろう
ここにあるのは全て自分の内面を形成するのに役立った
貴重な遺産ではないか。
その遺産を廃棄したり売り渡したりしようと考えるなんて
自分はなんと罪深くて強欲なやつなんだと
贖罪意識にまで苛まれてしまったのでございます。



結局その日は、整理対象だった本のうち
一冊も処分の決定を下すことができず
おまけにそれらのうちの何冊かを読み耽っているうちに
日が暮れてしまった次第。
しかし考えてみれば、これは予測された事態でございました。
数年前、実家で溜まっていた大量のビニール本を処分する際にも
似たような事態に陥ったのでございます。
古いビニール本を一冊一冊チェックしているうちに捨てるのが惜しくなり
それと同時にムラムラしてきた私、ふと気がつくと部屋の中は
広げたビニール本と丸めたティッシュの山で埋め尽くされておりました。



優柔不断な人間とは、このようなものでございます。
ビニール本のときの経験でそれは身に沁みていたはずなのに
何の学習もせずに同じ作業にとりかかったため
整理するつもりだった書籍すべてが、そのまま押入れに逆戻り。
愚かな私でございました.....