お天気屋さん




お目汚し、失礼いたします。



7月になりました。
これから季節は本格的な夏へと移行してまいりますが
私の地元では梅雨明けは今月半ば過ぎになるそうでございますし
昨今の異常気象じみた天気のことを考えますと
本当に夏になるのか、あるいはいつ夏になるのか
予測ができないような気がいたします。



よくテレビで気象予報士なる者が登場して
天気概況を述べたりしておりますが
私がいつも疑問に思うのは気象予報士を「 さん 」付けで呼んでいるのは
なぜなのかということでございます。
テレビのニュース情報番組のお天気コーナーにおいて
司会者やアナウンサーが気象予報士のことを
「 清水さん 」とか「 今出さん 」とか「 蓬莱さん 」
といった呼び方で紹介しているのを見聞きいたしますが
はっきり言って何やらキモイ感じがいたします。



番組に出演しているタレントや芸人とは違って
「 素人 」だからなのかもしれませんが
テレビに出演し大勢の視聴者に向かって天気予報をする限り
素人というわけにはまいりますまい。
また、タレントや芸人とは一線を画したり
権威を持たせたりするためだというのなら
「 清水予報士 」「 今出予報士 」「 蓬莱予報士 」
という呼び方でよろしゅうございましょう。



「 さん付け 」で呼ばれていた気象予報士といえば
私の記憶では「 梅雨前線 」を「 ばいうじぇんしぇん 」と言う
個性的な喋り方ととぼけたキャラで有名だった
故・福井敏雄氏が強く印象に残っております。
「 さん付け 」で呼ばれる以上、気象予報士の皆様方には
福井氏並みの個性を出してもらいたいもの。
ただし、目の肥えた視聴者を唸らせるような個性の出し方は
なかなか難しいものでございまして
不届きにも先達にあやかろうとしたり
今注目の国営放送のドラマに出てくるセリフをパクったりして
「 ばいうじぇじぇじぇ、じぇ~~~んしぇん!」などと申すのは
愚の骨頂といえましょう。



まぁニュースと同様、天気予報に個性など要らない
と言われればそれまでですが
お天気屋さんの視聴者を繋ぎ止めておくためには
番組に登場する気象予報士にも、ある程度のエンターティナー性が
必要ではないかと存じます.....






苦い電話




お目汚し、失礼いたします。



ビジネスや商売をやっておりますと
常にお客様第一でものを考えなければなりません。
しかし時にはこちらの立場をきっちりと説明し
言いたくないことでも言わなければならず
無理を承知でお願いや要求をせざるを得ない場合がございます。



先日、そういった、可能ならば避けて通りたいような用件で
お客様に電話をしておりました。
相手は私が前の勤め先にいた頃から
親しくしていただいていたお客様でございます。
私は慎重に言葉を選び、どういう風に話せばいいかを
蚤のような脳味噌をフル回転させて考えながら喋っておりました。



しかし時間が切迫していたことや
私の稚拙なコミュニケーション能力
そして何をどう伝えるかをはっきりと決めてからではなく
見切り発車のような形で話を切り出したため
結果的に相手に不愉快な思いをさせてしまったようでございます。



おまけに携帯電話を使って話をしていたのでございますが
話がきっちりとまとまらないうちに
唐突に通話が切れてしまいました。
私が携帯電話を誤操作してしまったせいかもしれませんが
お客様が立腹してガチャ切りしたとも考えられます。
いずれにしろ、(ノ∀`)アチャー という状況でございました。



妻が疲れて不機嫌なときに
よりによって股間がギンギンになってしまい
どうしても今夜ヤラなければマラの虫が治まらない。
やむなく拝み倒したり根気よく説得したりして
どうにかセックスをするまでに漕ぎ着けたものの
早まって顔にブッかけてしまった……そんな感じでございます。



折を見てフォローの電話をするか
御機嫌伺いに参じるつもりでございますが
今回のことが原因で、このお得意様とセックスレス
おっと失礼、セールスレスにならないか
心配しておる次第でございます.....






守る立場




お目汚し、失礼いたします。



7月1日の某報道ステーションにおいて
フィギュアスケート選手の安藤美姫が引退表明と同時に
妊娠・出産していたことを告白しております。
肝心の父親の名は明かさず
マスコミやネットではかつてのコーチ、ニコライ・モロゾフ氏か
もしくは同棲相手だと言われている元プロスケーター
南里康晴氏ではないかと憶測が乱れ飛んでおります。



引退表明、大いに結構。妊娠・出産、実にめでたい。
しかし彼女から芬々と発せられる
このDQN臭はどうしたことでございましょう。
父親の名を明かせないというのは
向こうが認知を拒否しているからでございましょうか。
それともわざと明かさずに向こうの反応を見て
楽しんでいるのでございましょうか。
あるいは、誰の子供か見当が付かないのでございましょうか。



向こうが何もかも承知の上だというのならまだしも
相手が認知を拒否しているような状況下で
わざわざテレビに出てきたのだとしたら
その神経が私には理解できませんし
相手の反応を窺って悦に入るなど正気の沙汰ではございません。
誰の子かわからないなどというのは、もはや論外でございます。



番組のオンエア後、私はなにやら吐き気を催してまいりました。
きっとこの後も何かのテレビ番組で、このニュースに関して
フェミニストか人権屋か進歩的知識人か、なんだかわからない有象無象が
ニタニタと気持ち悪い笑顔を見せながら「 女性の自立 」とか
「 一人の人間としての選択 」とか「 新しい生き方 」とか
勝手なことを申すのでございましょう。



安藤美姫自身は番組の中で
今回の件についてほとんど事実だけを淡々と述べていたようでしたが
今のフィギュアスケート選手を取り巻く状況
ひいてはアスリートに対する日本的な視線について
不満めいたものも漏らしておりました。
いわく、プライベートな時間をすごそうとしても周囲がそれを許さない。
ちょっと息抜きをしているだけなのに
その時間さえも練習に費やせという
有言・無言の圧力があるというようなことを申すのでございます。
確かにどんな人間にも息抜きは必要でしょうが
ゴム抜きでHをするのは、大人の選択とは申せません。



彼女に欠けているのは、この「 大人 」としての自覚でございましょう。
そんなことはないと思う方がいらっしゃるならば
あのニュース番組の中での彼女のインタビューのビデオを
もう一度御覧になってはいかがでございましょう。
妊娠や出産のことに話が及んだとき、「 緊張するぅ 」などと言いながら
番組のスタッフかマネージャーらしき人間の方に助けを求めるように
振り返っておりましたでしょうが。
なぜ、堂々と一人で話ができなかったのでしょうかな。



あなたは母親になったのでございますゾ。
子供を守らなければならない立場なのですゾ。
もはや守ってもらう立場の人間ではないのでございます.....






川の流れのように




お目汚し、失礼いたします。



体が痒ぅございます。
毎日風呂に入るかシャワーを浴びておりますゆえ
汗のせいではないはずと存じますが
湿疹や虫刺されが原因でもないのでございまして
現に痒いからには、やはり汗が原因としか考えられません。



きっと肌に汗がへばり付き、それが乾いて塩を吹き
その結晶がチクチクと私の体表を刺激して痒いのでございましょう。
これでは汗が出るたびにシャワーで洗い流さないと
痒みは消えないということになってしまいます。



若い頃はこんなことは滅多にございませんでした。
若い頃は、夏場の暑いときに大量に、しかも頻繁に汗をかきますゆえ
体表が常に流水状態、いわば川の流れのようなコンディションにあるために
塩を吹いたり塩が溜まったりということが無かったのでございましょう。
年を取ると汗腺機能が衰えるのか汗の量が減り
その分、体表が干上がった沼のような状態になって塩が溜まりやすく
それで痒くなりやすいのかもしれません。



年は取りたくないものでございます。
若い衆は私と違って、川の流れのように
肌から滾々と汗が湧き出てくるので塩を吹くこともなく
また仮に吹いたとしても、新しく湧き出た汗で
すぐに流れ落ちてしまうのでございましょう。



そういえば最近、若い衆とすれ違ったり近くに若い衆が居たりすると
せせらぎが聞こえてくるような気がいたします。
ついこの間も、道行く若いオネーチャンの胸元でイキの良い鮎が跳ね
その鮎の後を追いかけるかのようにカワセミが飛び立ちました。
よく見るとオネーチャンの脇の下で黒い水草がユラユラと川の水に靡いており
それを見た私は、股間のイモリがオオサンショウウオのように
大きく膨らんでいくのを感じました。



もちろん、こんなことが起きるはずはありません。
すべて川嘘のいたずらでございます.....






鼻息の荒い花




お目汚し、失礼いたします。



先月末の日曜日、「 ゆり園 」という名の公園に行ってまいりました。
大阪市此花区にある舞洲という人工島の浜辺にある公園でございまして
インターネットのサイトの施設案内によれば
200万輪ものユリの花が咲いているとのこと。
期間限定でしか入場できないらしく
今年の6月1日から7月7日までが開園期間だそうでございまして
念のため申し上げますが、現時点では開園期間は過ぎておりますゆえ
今はもう入場や観覧はできません。



行ってみましたら、海に面した丘のような場所に
色とりどりのユリの花がたくさん咲いておりました。
丘一面というわけではございませんが
かなりの数でございます。
潮の香りの中で数多くのユリの花が咲き誇っている光景は
何やら不思議な感じがいたしました。



思ったよりも大勢の人出でございました。
その日は梅雨の中休みのような
ぼんやりと晴れた天気でございましたゆえ
ちょうど知人から入場券をもらっていたのを幸いに
ちょっと行ってみるかと出かけたのでございますが
あまりの人出の多さに吃驚してしまいました。



そんな人込みの中、携帯電話を片手に
何か話をしながら歩いている御婦人を見かけました。
年のころは30代半ば、飛び切りの美人というわけではないのですが
顔的に私のタイプでございましたので
御尊顔を間近でそれとなく拝見させていただこうと
素知らぬふりをして近寄ってみたのでございます。



ところが次の瞬間この御婦人、とつぜん鼻の穴を膨らませ
「 なんでそうなるのよ!」と大声を張り上げました。
電話の相手に対して何かよほど腹に据えかねることがあったらしく
その御婦人の鼻息と声の荒さに私
自分が怒鳴られたような感じがして心臓が止まるほどショックを受け
思わず小便をちびりそうになってしまった次第。



それから御婦人は宙をにらみつけながら
黙って電話の相手の声を聞いていたようでしたが
私の方はというとしばらく動悸が止まらなくなり
危うくパニックになるところでございました。
できればその御婦人のチャーミングな鼻の穴が膨らむところを
もう一度見てみたかったのでございますが
もはや御尊顔を拝する気分的な余裕など皆無になっていた私
足早にその場から立ち去ったのでございます。



「 立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿は百合の花 」などと申しますが
野暮で無粋な私、芍薬も牡丹も百合の花も
その美しさの違いがよくわかりません。
ただ鬼百合の毒々しさは、なんとなく分かるような気がいたします.....






消えた看板




お目汚し、失礼いたします。



最近は映画の封切や上映を告げる広告看板を
街なかでほとんど見かけません。
映画館やビデオショップにおいては
映画の看板やポスターを見かけることがございますが
それ以外の場所では全くと言っていいほど見かけたことがございません。
映画関連の広告といえば、今は雑誌や専門誌などの書籍
テレビ・ラジオのCMやネットの公式サイトなどが
主力となっているようでございます。



私が高校生ぐらいの頃までは
街なかで映画の広告看板をよく見かけたような気がいたします。
そして今では考えられない状況でございますが
特にR18関連の映画の看板については
一般の映画のもの以上に散在しておりました。
しかしそういった看板は厳密には猥褻物に該当し
かつてはそれらを衆目にさらすことが大目に見られていたものの
時代の流れとともにやがて許容されなくなり
一般の映画の看板よりも先に
いち早く街角から姿を消してしまったようでございます。



男性の性欲を露骨に刺激するような看板が
巷に溢れていることの弊害は確かに多かったでしょうが
ある種のメリットもあったのではないかと存じます。
仕事や普段の日常生活において疲労やストレスを抱え込み
今と比べて休暇が少く、余暇を楽しむことにあまり積極的ではなかった
当時のオトーサンたちにとっては
ややもすれば性生活がおろそかに
あるいはマンネリになりがちだったことでございましょう。
しかし日常的にああいった看板を何気なく目にすることによって
よし、今晩一発ヤッてみるかとか
今日はこんな体位でイッてみるかとか
今夜はあんなことをしてみるかとか、こんなことをしてみるかとか
思いが膨らみ、股間も脹らみ
自分の妻をよりいっそう深く可愛がるための
呼び水になっていたかもしれません。



コンドームの某メーカーが先月27日に発表した調査結果によれば
既婚者の約半数が自分たち夫婦のことを
セックスレスだと感じているとのこと。
昔のように街角にどしどしポルノ映画やピンク映画の看板をおっ立てれば
そういう現状が改善されるような気もいたしますが
仮にそうなったとしても最近の既婚男性の場合、妻ではなく
PCやスマホの中に保存してある2次元の恋人と密会するための
誘い水になってしまいましょう。
あるいは夫婦関係に行き詰り
精神的にいっぱいいっぱいになっているような御仁は
街頭であるにもかかわらず、その手の看板に股間を使って突撃し
穴を開けることも考えられましょう。



こういう言い方は語弊があるかもしれませんが
街なかでR18関連の映画の看板を普通に見かけた頃は
ある意味、古き良き時代だったのかもしれません.....






恐怖の職人




お目汚し、失礼いたします。



先日、兵庫県の宝塚市役所において
固定資産税を滞納していた63歳の男が
税の徴収のために自分の口座の預金を差し押さえられたことで逆ギレし
市役所内部で放火をしております。
市としてはかなりの損害を受け、けが人も出ている模様。
容疑者はどうやら鉄工所で働く腕の良い職人だったようですが
最近は生活苦に陥り、自暴自棄になっていたそうでございます。



今はそのようなことはないのでございますが
30年ほど前、社会人に成り立ての頃の私は
いわゆる「 職人 」と呼ばれる方々に異様な恐怖を抱いておりました。
勤めていたところがメーカーでございましたゆえ
工場との打ち合わせや折衝が多く
場合によっては工場の職人と
直接話をしなければならなかったのでございますが
この職人というものの扱いや対応について
入社早々、先輩社員や上司から散々脅かされていたのでございます。



職人はプライドが高いので
神経を逆撫でするような言動はくれぐれも控えること。
職人がいったんへそを曲げたら梃子でも動かないから
職人の機嫌を損なわないように巧く話をしろ。
職人と上手に付き合い、信頼関係を築け。
とにかく職人を怒らせるな。職人に気をつけろ。
職人第一、職人最強、職人無双という具合。
まるで会社の実権は現場の職人が握っているかのような
有様でございました。



目に見えない恐怖は目に見える恐怖に勝ります。
事前にそんなことを聞かされてしまうと
まだ実際に職人と会わないうちから恐怖が膨張し
職人というものがまるで妖怪か魔神のように思えてまいります。
そしてそんな精神的プレッシャーが祟り
また実際に扱いや対応に苦慮する職人がいたことも災いし
工場の職人たちと満足なコミュニケーションをとることが
ほとんどできないまま、私はその会社を辞めました。
「 職人気質 」といえば通常
「 気難しい 」「 一本気 」「 頑固 」という言葉を
連想するものでございますが、私の場合、これに加えて
「 怖い 」「 厄介者 」「 怪物 」というイメージまで
付与されてしまったのでございます。



市役所の庁舎内で、天にも届けとばかりに火柱を上げるに至った
職人の男の心理は全く理解できませんが
此度の事件、かつて私が職人というものに対して抱いていた恐怖を
まさに具現化したような事件でございます.....






浅い価値観、薄い認識




お目汚し、失礼いたします。



広島県で起きた事件でございます。
仲の良かった16歳の少女同士がなぜかトラブルになり
殺人・死体遺棄へと発展
当初、犯行は何もかも自分が一人でやったと供述していた
容疑者の少女は、友人が共犯だということを告白。
総勢7名による犯罪だったとのことでございます。



事件の概要が明るみになったのは
容疑者の少女が警察に自首してからのことでございますが
自首を前にして不安におびえる少女を
スマホの通信アプリ、LINEを使って
友人たちが励ましていたそうでございます。
おそらくこれがきっかけとなって
彼らが共犯であることが露見したのでございましょう。



事件を報道した記事によっては、少女を励ます友人の
広島弁丸出しのセリフを載せているものもございますが
何やら安っぽい青春ドラマのワンシーンを見せられているようで
不愉快でございました。昔見た刑事ドラマで
犯人グループが警察との銃撃戦で負傷した仲間を
労わったり励ましたりしているシーンがございましたが
あれと似たような違和感を覚えました。



そもそもこの友人たちは
すべての罪をこの容疑者の少女におっかぶせて
口をぬぐうつもりだったのではございませんかな。
おまけに犯行に関わった7人のうちの何人かは
自分の犯した行為についての反省ではなく
これからの自分の行く末について心配をしているとか。
青春ドラマとは程遠い有様でございます。



今時の若者の心理や、この手の事件の根っ子にある社会的な背景について
底の浅い価値観や薄っぺらな認識しか持ち合わせていないから
そんなことが言えるのだという声が聞こえてきそうでございますが
この世の中、往々にして上げ底と厚化粧は付き物でございます。
そしてそれは特に子供や若い世代
またいわゆる「 弱者 」とか「 弱い立場 」と称されている層が
事件や問題を起こしたときのマスゴミの報道において
顕著に現れるものなのでございます.....






宮崎駿はとんでもないものを盗んでいきました。




お目汚し、失礼いたします。



アニメ作家、宮崎駿氏の最新作「 風立ちぬ 」が公開されておりますが
氏の作品は私、あまり見たことがございません。
初期の「 ルパン三世 」や「 風の谷のナウシカ 」「 となりのトトロ 」などは
テレビで拝見いたしましたが、映画館で見たのは「 紅の豚 」と
東宝チャンピオンまつりで「 ゴジラ 」シリーズの映画と併映されていた
「 パンダコパンダ 」だけでございます。



此度の作品、松任谷由美が荒井由美時代に発表した曲
「 ひこうき雲 」が主題歌となっております。
この曲、私の大好きな曲でございまして
この曲が収録されたLPレコードを大学生の頃に購入いたしました。
実家の押入れを探せば今もあるはずでございます。



作家が個人的な思い入れのある他者の作品を
自分の作品のテーマ、あるいはそれらを表現するための
ツールとして使うことはよくあることでございます。
そういった意味で、宮崎氏が「 ひこうき雲 」を主題歌として選んだのは
知的財産権のハードルをクリアしている限り、問題とはなりません。
しかしこの曲に特別な思い入れがあるのは
宮崎氏のみではないはずでございまして
そういった人々の中には、自分の中にある「 ひこうき雲 」を
胡散臭いヒゲオヤジに勝手に使われたと受け取るかたもいらっしゃいましょう。



40年近く前のことですが、SF作家の平井和正氏が
自分が書いた小説のあとがきのなかで
氏あてに届いた読者の声をいくつか紹介しておりました。
氏は虎や狼といった野生動物を
作品のテーマを表現するためのツールとして使っておりましたが
氏の読者の一人でやはりそういった意図から
狼が登場するような小説を書いておられるかたがいらっしゃいまして
氏に対して憤懣やるかたないといった心情を吐露しておられました。



そのかたは、その小説を書くことをライフワークとしていらっしゃったようで
氏が狼を使って創作をおこなうことによって自分の夢や生きる目的を
根こそぎ持っていかれたような気分になったのではないかと存じます。
さぞかし悔しかったことでございましょう。
しかし同時に、そういった声を自分の作品のあとがきに載せるということに
平井和正氏の作家としての懐の深さを見たような気もいたします。



このように、作家が表現のツールとして何かを使えば
別の人間がその「 何か 」に対して抱いていた思い入れを
図らずもゴッソリと掠め取ってしまう場合があり
またこれは作家としての宿命でございましょう。
そしてそのゴッソリと掠め取られた側が、それを受け入れたりスルーしたりして
自分なりに消化することができるか否かは本人の問題であると同時に
その掠め取った側の作家としての「 器 」も大きな要素となってまいりましょう。



私が「 ひこうき雲 」という曲に抱いている思い入れを
宮崎氏が掠め取ったことについて
氏が私のような輩を納得させる義理など毛頭ございませんが
仮に私と似たような空しさを覚えている人が別に居たとして
その空しさをその人なりに消化させる「 器 」が
宮崎氏に備わっていることを願って止みません。






ソファと埃と暗黒面




お目汚し、失礼いたします。



ここしばらくの間、目の回るような忙しさでございました。
そのため一週間ほど店の中が散らかし放題になっておりまして
見た目がよくありません。
とりあえず片付けたのでございますが
一ヶ月近くも掃除をしていなかったため
事務所の壁やソファ、テーブルや床の上にホコリがたまっております。
デスクの足元の暗がりから蚊が数匹舞い上がり
ハエも一匹、飛び回っておりました。
来客用テーブルの端から壁にかけて蜘蛛の巣までかかっております。



こういう人に見られたくない状況下に限って、来客がございます。
幸い、お得意先様ではなく、仕入先の営業担当者でございました。
しかし相手が誰であろうとみっともないところは見られたくございません。
かといって、あわてて目の前で片付けたり掃除したりするのは
なおいっそうみっともないわけでございまして
私はそ知らぬふりをして彼を迎え入れました。



用件は御機嫌伺いだったようで
ならば早く帰ってもらいたいものだと内心ヤキモキしながらも
私は笑顔で応対いたしました。
営業担当者の彼は、事務所に入るなり室内を見渡し
その散かりように気づいているのか気づいていないのか
「 いやぁ、暑いですねぇ 」と快活に笑いました。
ブランド物と思しきカッターシャツとスラックスに
高そうなネクタイとベルトを締めた彼の顔が
薄くホコリをかぶったソファに腰を下ろしたとき微かにゆがんだのは
暑さのせいだけではございますまい。



私は遅ればせながら、エアコンのスイッチを入れました。
当たり障りの無い世間話をしている間に室内は冷えてまいりましたが
じれったくなるほどの遅さでございます。
ようやく室内が人心地の付く快適な温度になったのは
そろそろ話のネタが尽き、相手も腰を上げるだろうと思ったころでございました。



で、何気なく営業担当者クンの顔を見たのでございますが
何やら額にビッショリと汗をかいております。
彼は私よりも年も若く、またどちらかといえばポッチャリ型なので
単純に汗かきなのだろうと思ったのですが
それにしては尋常ならざる汗の量でございます。
もうエアコンの冷気は室内の隅々にまで行き渡り
肌寒いほどであるにもかかわらず
顔を真っ赤にして汗の玉を額から滴らせているのでございます。



心なしか彼の全身がひどく強張っているように見えました。
なんとなく小刻みに震えているようにも見えます。
「 それでは社長、そろそろおいとまさせていただきます 」
と立ち上がった彼の体が一瞬大きく揺らぎました。
( 危ない!)と思いましたが、彼はすぐに体勢を立て直し
「 おっとっと… 」と苦笑いしながら、私の事務所から立ち去って行きました。



たぶん体調が悪かったのでございましょう。
そんな状態で御機嫌伺いに来た彼のプロ意識に敬服いたしましたが
反面、ひょっとしたらという良からぬ想像も浮かび上がってまいります。



もしかすると、彼がソファに腰を下ろしたとき
実際には彼はソファに腰掛けてはおらず
ごくわずかな間隙を空けて「 空気椅子 」をやっていたのかもしれません。
ブランド物のスラックスが
使いたおしたエチケットブラシのようになるのを恐れた彼は
ホコリまみれの小汚いソファに自分のスラックスが触れるのを避けるべく
「 エアチェアー 」という手段を使っていたのではありますまいか。



考えすぎかもしれませんが
彼が顔を真っ赤にして額に汗をかき
立ち上がった際に体が揺らいだ理由は
まさにそこにあったのかもしれません。
以前、腹を下して駅のトイレに駆け込んだとき
便座があまりにも汚かったために「 エア便座 」を使って用を足し
疲労困憊して同じような状態に陥った経験のある私にとっては
まったくありえない馬鹿げた話とも言い切れません。



しかしまぁ他人の暗黒面をあれこれと詮索するのは
自らも暗黒面に陥ることになります。
そもそも普段から事務所をきれいにしておけば良いだけの話。
これからはこまめに掃除をすることにいたしましょう.....