全開の傘




お目汚し、失礼いたします。



去年は梅雨明けが7月の半ば過ぎでしたが
気象庁の予報によれば、今年も長梅雨となるようでございます。
それでも今日、私どもの地元では昼から雨も上がり
本格的な夏の到来を予感させるような晴れ間が見えておりました。



小学生の頃、柄の先が赤くて丸い玉になっている女の子用の傘を
男の子が差して学校へ行くという物語を読みました。
国語の教科書に載っていた物語でございまして
男の子は自分の傘が壊れていたために
姉が予備に持っていたその傘を差して学校へ行かなければならなくなり
恥ずかしさと不機嫌さから俯きかげんで登校しておりました。



登校中、男の子はやはり一目見て女物とわかる傘を差して
俯きかげんで登校する同級生の男の子を見かけます。
訊けば、彼もまた自分の傘が使えなかったために
母親か妹の傘を借りて差しているとのこと。
二人の男の子はお互いに何やら意気投合して友だちになり
その日は下校する時も、いっしょに帰ることになりました。



あれほど恥ずかしかった傘が、そのときはもう何とも思いません。
雨も上がり、さんさんと太陽が降り注ぐ中
二人の男の子は全開にした傘を差しながら、得意げに下校する.....
うろ覚えですが、そのような話でございました。



人間というもの、ときおり自分自身に不安を感じることがございます。
自分の信念や感じかた、人生観・世界観、主義主張・趣味趣向が
著しく他者と異なるとき、果たして自分は人間として存在して良いものなのか
そんな心細い思いに囚われることもありましょう。



一応、私も人間でございますので、そのような不安に囚われた時期もございました。
しかし、インターネットというメディアと出会い、その匿名性を基本とする社会において
この世の中には様々な考え方があるのだ、色々な人間がいるのだということを知り
また、こういう好事家がいる、こんな変態もいるというふうに
私と共通点のある人間が大勢いることを知ったのでございます。



これは私にとっては、ホッとすると同時に大きな喜びでもありました。
何かとネガティブな側面がクローズアップされがちなネット社会ですが
少なくとも私に限って申すなら
そのネット社会に「 救われた 」という気がしたのでございます。



それはあたかも、雨上がりの空の下
全開にした社会の窓から金玉だけ剥き出して威風堂々と練り歩くような
ハレバレとした気分でございました.....






スケベオヤジ




お目汚し、失礼いたします。



長い話でございまして、おまけに愚痴でございますが
よろしければお付き合い下さいまし。



先日、とあるお得意様が私の店においでになりまして
仕事のお話を持ってこられました。
詳しい内容は伏せますが
至極簡単な仕事で楽勝ものの案件でございます。
遠方の出張を伴うものの
私にとっては朝飯前のような仕事でございました。



とはいえ、相手方の言うことを鵜呑みにするわけにもまいりません。
このお得意様、60代半ばの好々爺たる雰囲気のお方でございますが
私は以前、このお得意様にハメられたという苦い過去があり
その経緯を当ブログの記事にしたことがございました。

→ 胸騒ぎの悪勘 ( 2013年1月26日 )
http://omeyogoshisitsurei.blog.fc2.com/blog-entry-139.html



あの一件で懲りていた私は、仕事の内容を細部にわたってお尋ねし
「 裏がない 」ことを何度も念を押して確認いたしました。
その結果「 大丈夫だ 」というお返事を戴きましたので
引き受けることにいたしました。



ところが、でございます。
翌日、そのお得意様から電話で御連絡がありまして
なんでも、仕事の内容に若干、変更が生じたとの事。
概ね同じ内容だったのですが
言葉の端々に何やら曖昧な点が出てまいりまして
しかも更にその翌日、翌々日にも御連絡があり
だんだん雲行きが怪しくなってまいりました。



いつのまにやら仕事の内容が
とんでもない揉め事へまともに首を突っ込むような
きわめて危なっかしいものになっているのでございます。
最初にこの仕事の話をお聞かせいただいた時
私が一番気にかかっていたのは、まさにその点でございまして
そんな事態にならないかどうかを確認したら
「 大丈夫だ 」とおっしゃっていたからこそ
お引き受けしたのでございます。



それがだんだん話がアヤフヤになってまいりまして

「 大丈夫だ。心配無い 」
 ↓
「 心配無い。なんとかなる 」
 ↓
「 なんとかなるだろう 」
 ↓
「 なんとかなるはずだ 」
 ↓
「 なんとかできるはずだ 」
 ↓
「 なんとかしてくれ 」
 ↓
「 まかせたぞ 」

と、なっているのでございます。



正直なところ、どす黒い怒りの炎が込み上げてまいりましたが
私は、にこやかな笑顔でキリッとお断りいたしました。
おそらく、仕事の過程で何らかのトラブルが生じた場合は
私に話をつけさせるか、または露払いの役目をさせよう
という算段だったのでございましょう。



そもそも私には弁護士や示談屋、ネゴシエーターなどの才能はございません。
そして、私は「 人が良い 」というよりかは
自他共に認める「 馬鹿 」なのですが、馬鹿もここまで馬鹿にされると
ヘソの一つも曲げてみたくなるものでございます。



はっきり申しまして、あのお得意様のお顔はもう拝見したくありません。
あのお顔を拝見するたびに、「 ちょっと休むだけだから 」と言って
女性をラブホに連れ込もうとするスケベオヤジを連想するからでございます.....






虚無の戦争




お目汚し、失礼いたします。



EUやIMFとの間の債務返済問題で、ギリシャ側の出した結論がこれでございます。

OXI

EUによる財政緊縮策をギリシャが受け入れるかどうかの国民投票がおこなわれ
ギリシャ国民は「 OXI ( = NO ) 」という選択をいたしました。
緊縮案は反対だというわけでございます。



そうなると借りていたお金を返さなければならないわけですが
ギリシャ側の言い分としては

無いものは無い。鼻血も出ない。

ということでございまして
痛みを伴う改革はイヤだが、借金も払うことができないそうでございます。



EUは激怒しているに相違ありません。
「 NATO軍に強制執行させたろかゴルァ!」
とでも思っているかもしれません。
IMFもハラワタがさぞかし煮えくり返っていることでしょう。



しかしEUやIMFにできるのは、せいぜいEUからギリシャを除名したり
金融支援をやめたりすることしかできないのでございます。
そしてそれさえも、世界経済の混乱を招くからとか
EUが崩壊するからとか、ギリシャ国民には罪は無いからとかいった理由から
二の足を踏んでしまいそうな状況なのでございます。



ニュース映像では、緊縮策反対派の勝利に歓喜する
ギリシャ国民の様子がこれでもかぁ、これでもかぁ、と流れております。
他のEU加盟国は、この様子をどんな気分で見ているのでございましょう。
正直者が馬鹿を見る。カネは借りた者勝ち。軒を貸して母屋を取られる……
あまりの無力感でインポや不感症になってしまうのではないでしょうか。



インポや不感症になるだけならよろしゅうございましょうが
このことがきっかけでギリシャ国民に対するヘイト感情が増大し
国際紛争が起きたりはしないか、ちょっと心配でございます。
これまで世界は思想・宗教、文化や民族、人種の違いによる戦争が
何度と無く繰り返されてきましたが、これからはそこにもう一つ
「 無力感 」という全く新しい要素が加わるのではないか
そんな予感がいたします.....






辞書を片手に




お目汚し、失礼いたします。



数日前、車で街なかを走っておりましたら
コーギーを連れて散歩されている御婦人を見かけました。
御婦人が連れていたのは、いわゆるウエルシュ・コーギーという
胴長短足の犬なのですが
何やらジブリのアニメに出てくる小動物のような趣がございます。



と申しますのも、そのコーギー
よく見ると長い尻尾があるのでございます。
コーギーというのは尻尾が無い犬なのに
なぜそのコーギーだけ長い尻尾が付いているのか
そもそもコーギーにはなぜ尻尾が無いのか
私はググってみることにいたしました。



その日の仕事を終え、自宅に戻ってさっそくブラウザを立ち上げたのですが
キーボードを打つ手が止まりました。
ググればどういう情報が出てくるか、そのときにはもうなんとなくわかっていて
その情報を目にするのが忍びなかったのでございます。



しかし結局、私はググりました。
自分だけの思い込みを元にした言動は恥をかくことがありますし
むさくるしい中年男が「 ワンコがかわいそうだからググれない~ 」
というのもイタイタシイ話。
それにそんなことを躊躇する自分が、偽善者っぽくてイヤだったのでございます。



で、調べた結果、おおむね自分の思っていたとおりの情報が出てきましたので
はげしく後悔いたしました。
コーギーと同じ痛みを共有したかのごとく
お尻のあたりに幻肢痛のようなものさえ感じました。
なさけないオッサンでございます。
良く言えば感受性が鋭い、有り体に言えば神経過敏でございます。



もっとも、それほど悲観しなくてもいいじゃないかと、あとで思い直しました。
相手が人間であれ動物であれ、その痛みを想像し理解することは
けっして悪いことではないはずでございます。
それに、鋭い感受性や神経過敏な性格は、それなりの効用がございます。



エロ雑誌もビニール本も、AVもエロサイトも無かった昔は皆
国語辞典で「 下着 」「 陰毛 」「 性器 」といった言葉を調べながら
自家発電に励んだそうでございます。
股間をダイレクトに刺激するようなオカズが身近に無くても
感受性が鋭く神経過敏であるならば、辞書さえあればイケるはず。
そんな自信が付いた次第でございます.....






金魚のくちづけ




お目汚し、失礼いたします。



虫歯になってしまいまして、このところずっと
歯科医のセンセイにお世話になっておるのですが
なかなか治療がはかどりません。
歯や歯茎が年のせいで弱っているからでしょうか
センセイは色々と手を尽くしてくださっているものの
遅々として治療が進まないのでございます。



男のセンセイでございますが、治療の状況を逐一報告してくださります。
センセイはそういった報告を元にして
私に治療方針を決めてもらおうとしているようですが
正直、「 虫歯を治してほしい 」ということ以外、私が望むことはございません。
インフォームド・コンセントでしょうかコンド~ムド・イノセントというのでしょうか
近頃は医療の現場において患者と細かい合意の上で治療を進める
というのが常識となっていて
医師も患者もアバウトな感覚で治療をしたり治療を受けたりというのは
憚られる傾向にございます。



わずらわしいことではございますが
医療行為というもののリスクを考えればいたしかたございません。
きちんとセンセイの説明を聞いてよく理解をしたうえで
こうしてくれ、ああしてくれとお願いしなければなりません。



それにしても私の虫歯、早く治ってもらいたいものでございます。
治療費もかさみますし、センセイのむずかしい説明を聞くのも正直、億劫です。
それともう一つ、歯科医院の受付のオネーチャンが気になって仕方ありません。
最近入って来た人でございまして、年齢は20代半ばと思われ
喋るときに唇を尖らせるような癖がありまして
それが私にいかがわしい妄想を抱かせるのでございます。



治療中、ともすればあのオネーチャンの顔が目の前にちらつき
その金魚のような唇に私のイチモツが
ツンツク、ツンツク、と軽くキスをされているような妄想に陥って
油断すると股間がズボンを押し上げてしまうのでございます。
そんなとき、センセイが「 はい、倒しますよー 」と言って椅子を寝かせたら
醜態がモロ分かりになってしまいましょう。
そうならないように、緊張して治療を受けているのですが
ただでさえ歯の治療で緊張している上に
そんなことでさらに緊張するなんて苦行もいいところでございます。



もっとも、いざ治療が終了し、あのオネーチャンに会えなくなるとしたら
それはそれでまた寂しいこととなりましょう。
そのときは私、駐車場かどこか安全な場所に停めたクルマの中で
リクライニングレバーに手をかけて座席を何度も倒し
あのときの妄想を反芻するのが日課になっているはずでございます.....






深刻慄狂疑場




お目汚し、失礼いたします。



2020年の東京オリンピックのメイン会場として建設が予定されている
新国立競技場の工事費用の捻出問題が波紋を広げております。
今や工事費用のみならず、竣工後の莫大な維持費用まで取り沙汰され
問題はいっそう深刻化しているのですが
費用捻出の目途がはっきりと立っているわけでもないのに
工事は今さらやめられない、止まらないというのでございます。



この件に携わっているお偉いさん方は
例によって責任回避や言い訳やゴリ押しに終始しておりまして
実に見苦しいありさまでございます。この調子では
もし、今回の件をはるかに上回るような国家の一大事が勃発したとき
我が国のトップの人間たちは、たぶん真っ先に逃げ出すでしょう。
その終末論的な光景を想像すると、何やら慄然といたします。



そもそもオリンピックは参加している選手一人一人が
主役であるはずでございます。
選手が実力を遺憾なく発揮できるような施設でありさえすれば
たとえデザインが地味であってもよろしゅうございましょう。
それなのに、あんな女性器のオバケのようなモノを作ろうとするとは
何をトチ狂ったのでございましょうか。



それとも何ですか、オリンピックを出汁にして
ひと儲けしようとか甘い汁を吸おうとかしている連中が結託して
わざとあのような馬鹿高いものを作ろうとしているのでございましょうか。
関係者がきちんと国民に対して事情や経緯を説明しなければ
そのような疑いをかけられてもいたしかたございませんぞ。



もっとも、どうせ真相は藪の中となりましょう。
新国立競技場のデザインの選定に関わっていた某建築家は
予算が当初想定していた上限額の、倍近くにまで増えていることに関して
このように申しております。



何でこんなに増えてるのか、分からへんねん



何やらイラッといたします。
まるで場末の飲み屋で、酔った中間管理職のオッサンがこぼしている
愚痴のようになさけない発言なのですが
この言葉こそ、今現にこの国を動かしている連中のお寒い現状を
如実に反映しているのでございます.....





身の丈




お目汚し、失礼いたします。



ネットで、とある写真を見かけました。
フィリピンの女子大学生がフェイスブックに投稿したものでございます。
フィリピンはセブ島の夜の風景を撮ったものでございまして
小学校低学年ぐらいの小さな少年が小さな椅子らしきものにちょこんと腰掛け
小さな机に向かって勉強している写真でございます。



そばには某ファーストフード店の店舗があり
少年はそこから漏れてくる明かりを頼りに勉強をしているのでした。
少年の母親はその店で働いており、3人の子持ちで未亡人。
店に住まわせてもらっており、そこの店員以外に
家政婦の仕事もしているそうでございます。



少年のことを大変だなと感じるよりも先に、かわいいなと思いました。
また、少年やその母親に対するファーストフード店のフトコロの深さや
フィリピン社会の大らかさを垣間見たような気がいたしました。
その度量の大きさを裏打ちするように、その写真が公開されて以後
少年と母親には、経済的な援助や便宜を図る申し出が続いたとのこと。



ただ私、そういった賑々しい救いの手にはいささか違和感を覚えます。
親切心がお金という形になると
どうしても生臭いものがつきまとってしまうからでございます。
キレイ事を申すようですが、ここは一つ
少年と彼の母親が安心してその暮らしを続けることができるように
そして降って湧いたようなものではなく
ごく自然な形で生活の質が向上するように
何らかの違った形で救いの手を差し伸べるべきではないかと存じます。
もっとも、じゃあ具体的にどうすればいいんだ、言ってみろ、と問われると
ツライのでございますが。



急にジャブジャブとお金が手に入るようになるとろくなことはございません。
この少年やその母親がそうだと申すわけではございませんが
今まで苦労したり虐げられたりという境遇に居た者が
身の丈に合わない大金と贅沢な生活を与えられると
だんだん性格が捻じ曲がり、偏執狂のようになり
何かとイチャモンやケチをつけ
ユスリタカリの真似事をするようになるのでございます。



人間というもの、基本は身の丈でございます。
そして身の丈というものは、自らの力で伸ばしていくことが肝要でございます。
もっとも、それはなかなか難しく、容易にできるものではございません。
チンコの丈は、こすれば伸びますが所詮一時的なもの。
身の丈に合った生活は容易でも、身の丈を伸ばそうとするならば
場合によっては身の丈に合った生活を破壊しなければならないでしょう。



なさけないことですが、私にはチンコの丈は伸ばせても
身の丈を伸ばすのはできそうにありません.....






空想への扉




お目汚し、失礼いたします。



「 読書の秋 」などと申しまして
読書をするなら秋と相場は決まっているようでございますが
夏休みの宿題として読書感想文を提出しなければならない学校もありましょう。
また、エアコンの効いた涼しい部屋でなら
じっくりと読書を楽しむことができるはずでございます。



高校生だったときの夏休みに、早川書房が発行している
「 SFマガジン 」というSF小説の専門雑誌を読んだことがございます。
早川書房は国内外のSF小説を扱っている大手出版社ですが
その「 SFマガジン 」の中に早川書房の自社広告の頁があり
そこで書かれていた宣伝文に「 冷房の効いた部屋でどうぞ 」
というようなフレーズが記されておりました。



私見で恐縮でございますが
SF小説は、思いっきり空想の世界に浸る文学でございます。
ジトジトと汗に濡れた体をタオルで拭いながらとか
蚊に刺されたところを掻き過ぎて血を出しながらとか
そういう生活感むき出しで読むと興ざめでしょうし
不景気や生活苦でエアコンも使えないという
社会問題と背中合わせのような状況下では想像力も半減してしまいます。



そのフレーズを目にした私は
熱い夏のさなか、ルームクーラーでキンキンに冷えた部屋の中で
マタ~リと読むというのが、SF小説を読むのに最適なスタイルであり
空想への扉を開いて、その中へ踏み込んでいくための
必要な儀式であるように感じました。
そして何やらワクワクするような思いに捉われたのでございます。



今思えば、読者の購買意欲をくすぐる巧みなフレーズでございまして
まんまと釣られた私は、さっそく何冊かSF小説を購入いたしました。
ちなみにその頃の私が読んでいたSF小説というと
主に外国の作家の作品が多かったのですが
ハインラインとかブラッドベリとかディックとかいった
割とポピュラーな作家ではなく
アンドレ・ノートン、マイケル・ムアコック、C・L・ムーアといった
SF小説の読者以外には、あまり馴染みのないような作家の作品を
読んでいたのでございます。



私はそれらの作家の作品の何冊かを
前述のようなルームクーラーをキンキンに効かせた自室で読み始め
空想への扉を開けて、その向こう側の住人となりましたが
部屋が冷えすぎたせいか読み終わった後に
頭痛をもよおしたり腹を下したりすることが頻発いたしました。
どうやら私には、そのようなハイソな読書の仕方は
似合わなかったようでございます。



すっかり体調を崩してしまったために、その年の夏休みは台無しになり
私は、もう二度とあのような読書の仕方はするまいと心に決めました。
またその頃から、ミステリーの方に関心が高まっていき
SF小説とはだんだん距離を置くようになりまして
やがて一部の日本の作家の作品以外、SF小説は読まなくなってしまいました。



今、仮にSF小説を読めと言われても、読む気にはなれません。
リアルの生活に追いまくられているせいか
空想への扉を開くことができないのでございます。
SM小説なら読むことはもちろん、書くことすら吝かではないのですが.....






蓼食う虫




お目汚し、失礼いたします。



世界一大きな花にして激しくイヤなニオイを放つ植物
ショクダイオオコンニャクなるものが先日
東京都調布市の神代植物公園で開花いたしました。
この植物の映像をネットで拝見したのですが
何やら往年の特撮ドラマ「 人造人間キカイダー 」に登場した
悪役ロボットの着ぐるみのようなナリをしております。
それにしても花の持つ美しさで注目されるのではなく
その大きさや悪臭で話題になるとは
なんとも哀れな植物ではございませんか。



しかし私はこの花に対して、妙に惹かれるものを感じました。
その外見からショクダイオオコンニャクの「 ショクダイ 」は
おそらく蝋燭を立てる燭台のことを指しているのでございましょう。
「 燭台→ろうそく 」という連想や
「 コンニャク 」「 イヤなニオイを放つ 」という言葉から
妄想癖のある私の目の前には
即座にイヤラシイ光景が浮かび上がってまいります。
この花自体を見て自家発電をしようとは思いませんが
この花が醸し出す妄想は、十分に自家発電の燃料たりうるものでございます。



美しいばかりが人を惹きつけるわけではございません。
均整の取れた顔や体形、美声や薫香を有した女性が
そうでない女性に比べて必ずしも魅力的だとは限りません。
むしろ顔の面積や胴回りがデカいとか、ダミ声で口臭がきついとか
足が臭い、ウンコが太い、立ちションをする
人前でも平気で鼻糞を取って食べる
男性の股間をピンヒールで踏みにじって快感を覚える.....
そういった女性に魅力を感じる男性もおられましょう。



また、花と言えば女性というイメージがございますが
ショクダイオオコンニャクの花の姿は
男性というイメージでも違和感が無いような気がいたします。
見た目は、細長いだけがとりえの頼りない粗チンのようですが
やはり美しい女性だけが男性を惹きつけるわけでもないのと同じく
細くて貧相な上に、思わず顔をしかめたくなるような
饐えたニオイを発しているにもかかわらず
そういったモノに魅力を感じる女性もおられましょう。



ショクダイオオコンニャクの花は、女性のそういった性的嗜好に
火を点けるきっかけとなったかもしれません。
神代植物公園でショクダイオオコンニャクを見物した御婦人方の中には
その晩、ベッドの上で自分でも驚くほど夫に対して積極的になったかたが
数多くおられるのではないでしょうか。



言い古された諺ですが、蓼食う虫も好き好きなのでございます.....






失われた興奮




お目汚し、失礼いたします。



千葉県船橋市にある「 ふなばしアンデルセン公園 」というテーマパークが
大人気のようでございます。
世界最大と言われる某旅行口コミサイトにて
2015年における日本のテーマパークの人気ランキングが発表され
1位の東京ディズニーランド、2位の東京ディズニーシーに次いで
ふなばしアンデルセン公園が3位にランキングされているとのこと。
私の地元、大阪府の大阪市此花区にございます世界的テーマパークの
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンは、その次の4位に甘んじております。



この「 ふなばしアンデルセン公園 」ですが
1987年に「 ワンパク王国 」の名で開園し
その後、1996年に現在の名でリニューアルオープンしたようでございます。
一時期、テーマパーク不況の嵐が吹き荒れ
全国各地でテーマパークの閉園、廃業が相次いでおりましたが
そういった荒海の中をどうにか乗り切って今日の名声を獲得したというのは
地元民にとっては実に喜ばしいことでございましょう。



ところで、テーマパークの主役は子供でございます。
子供にとってテーマパークでの体験や記憶は
貴重な人生の一ページとなります。
それゆえ、そのテーマパークが人気を博して入場客が増えるのは
望ましいことでございますが
逆に閉園や廃業となると、子供は悲しい思いを抱くことになりましょう。



兵庫県宝塚市にかつて「 宝塚ファミリーランド 」という
テーマパークがございました。
宝塚歌劇場のすぐ近くにあったかと存じますが
子供の頃の私、親に連れられて何回かこのテーマパークへ行きました。
当時はテーマパークとは呼ばず
この手の施設は総じて遊園地と呼ばれておりましたが
宝塚ファミリーランドは、遊園地の施設以外に
動物園や植物園も併設されておりました。



私の記憶が確かなら阪急電車の宝塚駅を降りると
すぐに宝塚ファミリーランドの正面入口がございました。
そしてその向こうから生臭い水のにおいとともに
オットセイの鳴き声が聞こえてまいりまして
当時、小学生だった私はいつもその時
まだ遊園地の中に入っていないにもかかわらず
何やら異様なワクワク感やときめきを覚えたのを記憶しております。



このテーマパーク、10年ほど前に閉園となりましたが
あのときのワクワク感やときめきは、今も覚えております。
もう一度、あの興奮を味わいたいものでございますが
あのような興奮に出会える機会はこの先、もはや無さそうですし
あのような興奮を味わうには私はあまりにも年を取り過ぎてしまいました。



ときおり、ネットで初訪問のエロサイトに入るときや
久しぶりに更新された行き付けのエロサイトに入るときなど
似たような興奮を味わうことがございます。
しかし生臭い水のにおいとオットセイの鳴き声がもたらしてくれた
奇跡のようなあの時の興奮には、所詮、足元にも及びません.....






不器用な男




お目汚し、失礼いたします。



今日の昼過ぎのことですが
私の店の事務所で見積書を書いておりましたら
左手の甲に小さくて濃い灰色のものを見かけました。
よく見ると蚊でございまして
何やら体をちぢこませ、体全体を丸くしてじっとしております。



顔文字を連想いたしました。
落胆や無力感などを表現するもので
いわゆる「 オルツ 」と称されているものでございます。
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私の血を吸おうというのでございましょう。
叩き潰してやろうかと、私はそっと右手を上げましたが、やめました。
滑稽で無防備な姿を晒して私の血を吸おうとしている灰色の蚊の姿が
スーツを着たサラリーマンに見えたのでございます。
妻子のために恥も外聞も捨て、自分の命さえも省みず一所懸命に働く
そんな不器用で一途なサラリーマンの姿がダブって見えたのでございます。



自分の身がいつどうなるともわからない。
しかし生活の糧を得るためには、なりふりはおろか
命の危険さえもかまってはいられない。
ヘタレの私とは正反対の、一昔前の企業戦士のような姿でございました。
その姿に敬意を表し、しばらくそのままにしておりましたら
やがて蚊は血を吸い終えたのか、私の手の甲から飛び立っていきました。



そうやって何やらイイことをしたような気になり
独りよがりな満足感に浸っていた私でしたが
まもなく蚊に刺された箇所が膨らんできて猛烈に痒くなってまいりました。
そのせいで見積書に書き損じが生じ、仕事に遅れが出てしまった次第。
不器用で一途な企業戦士に敬意を表するのも
時と場合によりけりだと痛感いたしました。



それに、そもそも蚊という生き物、血を吸うのはメスだけだそうでございます.....