幻のエピローグ




お目汚し、失礼いたします。



学研の月刊学習雑誌「 科学と学習 」といえば
付録の教材が有名でございます。
私と同年代のかたでございましたならば
あの教材を使って水飴や豆腐を作ったり
ニクロム線の付いたカッターで発泡スチロールを切ったりしたかたも
いらっしゃるのではないかと存じます。
残念ながらこの「 科学と学習 」、現在は休刊となっておりますが
付録の教材はもちろん、雑誌に掲載されていた記事や読み物も
私にとっては思い出深いものでございます。



ところで、この「 科学と学習 」という学習雑誌
「 科学 」と「 学習 」という2つのタイトルに分かれており
それぞれ別々の雑誌だったのでございますが
その「 科学 」に連載されていた或る小説に私
非常に深い思い入れがございます。
当時私は小学6年生だったのでございますが
その小説の内容は一言で申せば
アンチユートピア小説のようなものでございました。
おぼろげな記憶ではございますが
ストーリーはざっと以下のようなものでございます。



一人の若者が謎めいた女性と出会いますが
実はその女性は宇宙人だということが判明し
若者はその女性の故郷の星へ彼女とともに訪れます。
不幸な形で文明が発達し
異常な状況に陥っているその星の様子を目撃した後
若者は一人で地球に戻って来てその様子を喧伝するのですが
周囲から精神異常者として扱われた彼は
病院で軟禁状態になってしまいます。
宇宙人の女性からもらった細長いマジックペンのようなものを使って
若者は自分が真実を語っていることを伝えようとしますが
そのマジックペンのようなアイテムの使い方がなぜか思い出せません。
しかし何年か経ったのち、その使い方を偶然思い出して使ってみると
アイテムはプラネタリウムのようなプロジェクターと化して
映像とともに驚くべき事実を語りはじめます……




当時、毎月「 科学 」と「 学習 」両方を購入していたにもかかわらず
この物語がどのような結末を迎えたのか、覚えておりません。
そこで検索をかけてみたのでございますが、私が検索した限りでは
この件に関する記事が掲載されているサイトは、一つしかございませんでした。
そしてそのサイトにおいても、ネタバレになるためでしょうか
結末に関しての詳細な描写は、なされていなかったようでございます。



ただ、作品のタイトルや作者の名前など
作品に関するある程度の情報は得られますし
ストーリーはおおむね私が覚えていたものと同じでございまして
また、印象に残っているシーン
たとえば大怪我をした宇宙人の女性が
手を当てるだけで自分の傷を治してしまったり
女性の乗ってきたUFOがマジックミラーのような構造だったり
そして特に、この物語を締めくくる小道具として登場する
マジックペンのようなアイテムの使い方が
机の上に「 叩いて立てる 」ことだったと記されているのを見たときは
なにやら目頭が熱くなってしまいました。



それほど思い入れの深い物語だったにもかかわらず
インターネットというツールがありながら
なぜ今まで検索をかけようとしなかったのか我ながら不思議でなりません。
たまたまネットサーフィンをしているときに
学研の「 科学と学習 」の記事がヒットして、唐突にこの物語のことを思い出し
検索をかけたわけなのですが
それはまるでこの物語の主人公が
マジックペンのようなアイテムの使い方を思い出すことができず
軟禁状態だった病院で釘を打つ作業をしているときに
「 叩いて立てる 」という使い方を偶然思い出したシーンを連想させ
これまた何やら不思議な感じがいたします。



検索をかけることに思いが及ばなかったのは
きっと少年期の純真無垢な感性や素朴な知的好奇心を忘れ
股間のマジックペンを「 こすって立てる 」ことに
血道をあげていたせいでございましょう。良かれ悪しかれ
人間はいずれ少年時代とは別の生き物になってしまうのでございます。



ともあれ、幻のようだった物語に
その輪郭を付与してくれるような情報が手に入ったのは喜ばしいこと。
しかしこの作品のクライマックス、あるいはエピローグは
私個人にとってはまだ明らかになってはおらず
歯がゆい思いがすると同時に、逆にそれによって
この作品のミステリアスな雰囲気が色褪せないという思いもあり
複雑な心境でございます.....



追記

ちなみにこの作品、「 空想科学小説 」と銘打って
「 ある機械星の話 」( あるきかいぼしのはなし )という題名が付けられておりました。
作者は、行方勇 ( 姓は〝 行方 〟 名は〝 勇 〟 )というお人で
「 ゆきかた いさむ 」とお読みするようでございます。






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