甘酒の味




お目汚し、失礼いたします。



私が小学生の頃でございました。
冷え込みが厳しかった2月のとある日曜日
家族全員で某観光地へドライブにでかけました。
車を現地の駐車場に停めて外に出ると
土産物屋や食堂などが並ぶ目抜き通りを散策していたのでございますが
あまりに寒いので父親が甘酒を飲みたいと言い出し
私たち一家は手近に有った茶店に入りました。
よほど寒かったのでしょう、母親も甘酒を注文し、そのうえ父は私にまで
「 おまえも甘酒、飲むか?」と尋ねたのでございます。



「 甘酒 」と聞いたそのときの私の脳内イメージは
甘い味がする、温かくて透明な飲み物でございました。
常日頃、父親が晩酌に飲む日本酒の熱燗を見て
子供ながらに好奇心を抱いていた私は
きっと甘酒というのは父が飲んでいる熱燗に似ていて
しかも子供でも飲める甘ったるいソフトドリンクのようなものなのだと
思い込んでしまったのでございます。



それゆえ、私が父親の問いかけに一も二も無く首肯したのは
ごく自然な成り行きでございました。
そしてほどなく私は、後悔することになります。
茶店の店員さんが盆に載せて持ってきたのは
ドロドロの白い液体が入った大きな湯呑み茶碗でございました。



湯気が立っているその白濁した液体からは
イカ臭いニオイや栗の花のニオイなどはいたしておりませんでしたが
ツンと鼻を突く薬のような香りが漂い出ております。
自分が抱いていたイメージとあまりにもかけ離れたものを見て
私は一気に萎えてしまい、一滴も口にすることができませんでした。



そのときの違和感がトラウマになってしまったのか
私、五十歳を過ぎた今になっても甘酒を飲んだことがございません。
甘ったるいカクテルやリキュール、チューハイの類は若い頃に散々飲みましたし
粕汁もよく食したものでございますが
なぜか未だに甘酒だけは飲むことができないのでございます.....






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