静かなる送風




お目汚し、失礼いたします。



私が小学生のときでございました。
学校からの帰り道、たまたま校門から出てきたときに居合わせた
別のクラスの男子生徒となぜか意気投合いたしました。
何を話したのかは覚えておりませんが
なにやら妙に気が合って話しながら歩いているうちに
その生徒の家の近くまで来ておりました。



そこは学校からも私の家からも遠く離れた山の手にある住宅地で
集合住宅が立ち並ぶところでございました。
近くに公園があり、私と彼はその公園でしばらく話し込んでおりました。
非常に楽しかったのを記憶しておりますが
しかしそれ以降、その生徒と学校で顔を合わせても
口を利いたり一緒に遊んだり下校したりということは
二度とございませんでした。



その生徒の顔は今もよく覚えております。
もしかしたら、彼とは今も一緒に酒を飲みに行ったり
悩み事を打ち明けたりするような仲になっていたかもしれません。
しかしあの日、あれだけ楽しいひとときを過ごせたというのに
私と彼が友達になることはなかったのでございます。



思うに、至福のときを共有できたからといって
それがたちまち親しい友人関係になるとは限らないのでございます。
その奇跡とも思えるような瞬間は非常に危うくて移ろいやすく
絶えず適量の空気を静かに送っておかなければ
たちまち燃え尽きるか吹き消されてしまうものなのでございまして
またこのことは友達関係に限らず、すべての人間関係について言えましょう。



そのようなことをこの年になってようやく気づき
自分に友達が少ないのはモノグサな性格が原因なのだと
ヒシヒシと痛感する今日この頃でございます.....






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