澱まない水




お目汚し、失礼いたします。



一昨日の夕刻、私の店に新人の営業マンがやってまいりました。
常連の代理店の社員ではなく、まったくの飛び込みセールスでございます。
最近の若い衆にしては押しが強く、それでいて強制的な感じは一切なく
自信に満ち溢れた態度と巧みな話術は
まさに「 立て板に水 」といった印象でございました。



その営業マンを見ておりましたら、私が社会人になりたてのころに
同期入社した男性社員のことが思い出されてまいりました。
彼は決して話術が巧みだというわけではなく
必ずしも自信に満ちた態度でいたわけではなかったのですが
ただ一つこの営業マンと似ていたのは、話に澱みがなかったことでございます。



先輩社員から叱られたり
意地の悪いツッコミを入れられたりすることの多い彼でしたが
沈黙したり口ごもったりということが一切ございませんでした。
なんと申しましょうか、彼と話をすると必ず話が「 進む 」のでございます。
その方向性が前であろうと後ろであろおうと
とにかく話が何らかの展開を見せるため
彼と話をすると退屈したり、気詰まりになったりということが
ほとんどございませんでした。
そのせいか、女性関係の方もけっこうお盛んだったようでございます。



やがて私がその会社を辞めるころには
彼は一昨日前にやって来た営業マンのように
「 立て板に水 」の話術を会得しておりました。
そしてその後20年近く経ったころ
とある国際的な見本市会場で彼と出会いましたが
案の定、その会社の最前線で働くエース級社員となっておりました。



「 立て板に水 」の話術というのは、そういう技術より以前に
「 話を進める 」という衝動がなければ身に付かないようでございます。
立てチンに水をかけてフニャラせるようなセールストークばかりしている
私のような人間には習得できない技術なのかもしれません.....






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