カチン、コチン




お目汚し、失礼いたします。



私は喧嘩というものをほとんどいたしません。
何か「 カチン 」とくることがあっても
せいぜい「 コチン 」という程度のストレスにとどめるよう
精神状態をコントロールすることに日夜、務めておりまする。
しかしそれが必ずしも毎回うまくいくとは限りません。



先日の昼過ぎ、私の携帯電話にとある取引先から着信がありました。
はっきり申しまして、いわゆる「 波長の合わない 」相手でございます。
およそ一年ぶりに聞く声でございまして
二度と聞きたくなかったのでございますが
ビジネスの話でございますゆえ、いたしかたありません。



渋々電話に出ましたが
相手は会話のしょっぱなから私の名前を間違えております。
話しているうちに気づくかと思いきや、まったくそんな様子がないので
さすがにこちらから指摘いたしました。
指摘されると訂正はするものの、それがどうしたという口調でございまして
おまけに、仕事の話があるから今すぐこっちへ来い、というわけでございます。
複雑な見積もり計算をしている最中でしたが
とりあえず図面や書類を片付けて先方へ出向くことにいたしました。



先方の事務所で話を聞き、二、三、質問をしたのですが
こちらがちょっとした勘違いをして頓珍漢な質問をすると
何やら癇に障るような言い方であげつらうのでございます。
この御仁、自分の考えていることは他人も当然分かっているはずだ
という妙な信念があり、しかも人と会話をする際には
まるで独り言を言っているような喋り方で語りかけてくるのでございます。
そのため、こちらとしては相手が何を話しているのか
チンプンカンプンでございまして、しかも始末が悪いことに
そんな一人芝居のような話し方に対して
こちらがキョトンとしているという状況に当人は気付いておりません。
それが原因で以前、ちょっとしたトラブルになったこともございました。



そして以前からそうなのですが、このお方
こちらに対してビジネスの相手というよりかは
「 都合の良い 」下請け先と見ているフシがあり
馬鹿そうな奴だから利用するだけ利用してやろうという下心が
ミエミエでございます。まったくもって失礼な話でございまして
私は決して「 馬鹿そうな奴 」ではございません。
「 馬鹿な奴 」なのでございます。



商談を終えた私は、車を運転しながら自分の店への帰途に就いておりましたが
商談中の相手の態度や物腰を思い出し
遅まきながら「 カチン 」とくるものを感じてまいりました。
気を紛らわせるべくガムを噛み、カーラジオのボリュームを上げると
「 カチン 」というストレスは、どうにかこうにか
「 コチン 」というストレスにダウングレードいたしましたものの
木霊のように「 コチン……コチン…… 」と浮いては消え、浮いては消え
ということを繰り返しておりました。
そして不愉快な思いは消えるどころかますます強くなり
やがてセミオート射撃からフルオート射撃に切り替わった自動小銃のごとく
「 コチンコチンコチンコチンコチンコチンコチンコチンコ 」と
小さなストレスが連続して湧き上がるようになってしまったのでございます。



危険を感じた私は路肩に車を止め、深呼吸をいたしました。
こんなことで気が散って運転を誤り、事故など起こしては元も子もありません。
とりあえず落ち着きを取り戻し、無事に自分の店へ戻ったものの
しばらくは尾を引いておりました。



自分なりに精神面でかなりオトナになったと思っていたのでございますが
やはりまだまだ青臭いようでございます.....






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