金髪とターバン




お目汚し、失礼いたします。



金髪の若い日本人男性が涙目で謝罪しております。
液晶画面の向こう側、YouTubeにアップされた動画の中で
しきりに恐縮している彼は俳優でございまして
大事な舞台公演に穴をあけてしまったことを詫びているのでございます。
聞けば公演時間を間違えて自宅で爆睡し
目覚めたときにはとっくに開演時間を過ぎていたとのこと。



そういう深刻な会見の場において
金髪頭で出てくるとは何事かという声も聞こえてきそうでございますが
私は逆に、自らの個性や自己主張を前面に押し出すための武装手段として
頭を金色に染めている若者が、世間の一般常識の軍門に下って捕虜となり
自己批判をさせられているように見え
むしろ痛々しい( 「 イタイタシイ 」ではなく )という印象を受けました。
そして同情心が芽生えると同時に
彼の謝罪や釈明に少なからぬ説得力を感じたのでございます。



私の場合、このようなすっぽかしはございませんが
社会人になりたてのころは出勤の際の遅刻がひどぅございました。
常日頃から朝早く起き、時間に余裕を持った状態で
通勤に出かけるようにしていたのですが
ついつい寝坊をして電車に乗り遅れてしまうのでございます。
自分でもあきれるほど頻繁に、会社の始業時間に遅れてしまいまして
面と向かって上司や会社から謝罪や釈明を求められることは
一回もございませんでしたが、遅刻した時の周囲の冷たい視線には
ある意味、殺人的なものがございました。



そんなおり、何かの雑誌かテレビ番組の中で
インドではバスが時刻表どおりに来たためしがない。
そしてインドの人々はそれが当たり前だと思っている
というようなことが語られていたのを見たことがございました。
そのとき私は、あぁ、なんと大らかな国だろう。
自分もインドに住み、インド人になってみたいと痛感いたしました。



そしてインド人というと、両手を合わせて「 ナマステ~ 」
と申す挨拶が有名でございますが、どんなに遅刻して出社しても
頭に白いターバンを巻いてインド人になりきり
「 ナマステ~ 」と挨拶をしながら出社すれば

『 彼はインド人だからしかたがない 』

『 私たちとは風俗習慣、ものの考え方が違う 』

と周囲は理解を示してしてくれるのではないかと思いつきました。
そうすることによって、たとえ遅刻したとしても
タイムカードを押して自分の職場へ入るときに感じていた
あの冷たい殺人的な視線は消えうせるだろうと考えたのでございます。
もちろん実践したわけではございません。



もうじき五月でございますが
今年入社した新入社員のみなさま、社会人一年生のみなさま
いかがお過ごしでございましょうか。
そろそろ五月病に悩まされているかたもおられることかと存じますが
その一方で、職場や仕事に慣れすぎて気分がたるみ
遅刻という失態を繰り返してしまうかたもおられるのではないでしょうか。



そんなあなたに私からの忠告でございます。白いターバンを頭に巻き
両手を合わせて「 ナマステ~ 」などと口走りながら出社するのは
おやめなさいませ。少なからぬ説得力など、望むべくもございません。
たちまち会社から「 ポイ捨て 」にされてしまいますゾ~






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