恐怖の職人




お目汚し、失礼いたします。



先日、兵庫県の宝塚市役所において
固定資産税を滞納していた63歳の男が
税の徴収のために自分の口座の預金を差し押さえられたことで逆ギレし
市役所内部で放火をしております。
市としてはかなりの損害を受け、けが人も出ている模様。
容疑者はどうやら鉄工所で働く腕の良い職人だったようですが
最近は生活苦に陥り、自暴自棄になっていたそうでございます。



今はそのようなことはないのでございますが
30年ほど前、社会人に成り立ての頃の私は
いわゆる「 職人 」と呼ばれる方々に異様な恐怖を抱いておりました。
勤めていたところがメーカーでございましたゆえ
工場との打ち合わせや折衝が多く
場合によっては工場の職人と
直接話をしなければならなかったのでございますが
この職人というものの扱いや対応について
入社早々、先輩社員や上司から散々脅かされていたのでございます。



職人はプライドが高いので
神経を逆撫でするような言動はくれぐれも控えること。
職人がいったんへそを曲げたら梃子でも動かないから
職人の機嫌を損なわないように巧く話をしろ。
職人と上手に付き合い、信頼関係を築け。
とにかく職人を怒らせるな。職人に気をつけろ。
職人第一、職人最強、職人無双という具合。
まるで会社の実権は現場の職人が握っているかのような
有様でございました。



目に見えない恐怖は目に見える恐怖に勝ります。
事前にそんなことを聞かされてしまうと
まだ実際に職人と会わないうちから恐怖が膨張し
職人というものがまるで妖怪か魔神のように思えてまいります。
そしてそんな精神的プレッシャーが祟り
また実際に扱いや対応に苦慮する職人がいたことも災いし
工場の職人たちと満足なコミュニケーションをとることが
ほとんどできないまま、私はその会社を辞めました。
「 職人気質 」といえば通常
「 気難しい 」「 一本気 」「 頑固 」という言葉を
連想するものでございますが、私の場合、これに加えて
「 怖い 」「 厄介者 」「 怪物 」というイメージまで
付与されてしまったのでございます。



市役所の庁舎内で、天にも届けとばかりに火柱を上げるに至った
職人の男の心理は全く理解できませんが
此度の事件、かつて私が職人というものに対して抱いていた恐怖を
まさに具現化したような事件でございます.....






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