宮崎駿はとんでもないものを盗んでいきました。




お目汚し、失礼いたします。



アニメ作家、宮崎駿氏の最新作「 風立ちぬ 」が公開されておりますが
氏の作品は私、あまり見たことがございません。
初期の「 ルパン三世 」や「 風の谷のナウシカ 」「 となりのトトロ 」などは
テレビで拝見いたしましたが、映画館で見たのは「 紅の豚 」と
東宝チャンピオンまつりで「 ゴジラ 」シリーズの映画と併映されていた
「 パンダコパンダ 」だけでございます。



此度の作品、松任谷由美が荒井由美時代に発表した曲
「 ひこうき雲 」が主題歌となっております。
この曲、私の大好きな曲でございまして
この曲が収録されたLPレコードを大学生の頃に購入いたしました。
実家の押入れを探せば今もあるはずでございます。



作家が個人的な思い入れのある他者の作品を
自分の作品のテーマ、あるいはそれらを表現するための
ツールとして使うことはよくあることでございます。
そういった意味で、宮崎氏が「 ひこうき雲 」を主題歌として選んだのは
知的財産権のハードルをクリアしている限り、問題とはなりません。
しかしこの曲に特別な思い入れがあるのは
宮崎氏のみではないはずでございまして
そういった人々の中には、自分の中にある「 ひこうき雲 」を
胡散臭いヒゲオヤジに勝手に使われたと受け取るかたもいらっしゃいましょう。



40年近く前のことですが、SF作家の平井和正氏が
自分が書いた小説のあとがきのなかで
氏あてに届いた読者の声をいくつか紹介しておりました。
氏は虎や狼といった野生動物を
作品のテーマを表現するためのツールとして使っておりましたが
氏の読者の一人でやはりそういった意図から
狼が登場するような小説を書いておられるかたがいらっしゃいまして
氏に対して憤懣やるかたないといった心情を吐露しておられました。



そのかたは、その小説を書くことをライフワークとしていらっしゃったようで
氏が狼を使って創作をおこなうことによって自分の夢や生きる目的を
根こそぎ持っていかれたような気分になったのではないかと存じます。
さぞかし悔しかったことでございましょう。
しかし同時に、そういった声を自分の作品のあとがきに載せるということに
平井和正氏の作家としての懐の深さを見たような気もいたします。



このように、作家が表現のツールとして何かを使えば
別の人間がその「 何か 」に対して抱いていた思い入れを
図らずもゴッソリと掠め取ってしまう場合があり
またこれは作家としての宿命でございましょう。
そしてそのゴッソリと掠め取られた側が、それを受け入れたりスルーしたりして
自分なりに消化することができるか否かは本人の問題であると同時に
その掠め取った側の作家としての「 器 」も大きな要素となってまいりましょう。



私が「 ひこうき雲 」という曲に抱いている思い入れを
宮崎氏が掠め取ったことについて
氏が私のような輩を納得させる義理など毛頭ございませんが
仮に私と似たような空しさを覚えている人が別に居たとして
その空しさをその人なりに消化させる「 器 」が
宮崎氏に備わっていることを願って止みません。






コメント

非公開コメント