苦虫顔




お目汚し、失礼いたします。



人間というもの、ときおり自分の苦い過去を振り返り
「 あのとき、どうすれば良かったのか 」
という思いにとらわれることがございます。
特にその過去が現在にまで尾を引いているのなら
そういう思いにとらわれるときがなおさら多くなりましょう。



高校生だったとき、私の数学の授業の担任教師が
なぜか何の脈絡も無く顔をしかめることがございました。
そのときはなぜその先生が顔をしかめているのか
何か突発的な苦痛の発作が起きる持病でも抱えているのだろうかと
不思議に思ったのですが、生徒のうちの誰一人として
その先生が顔をしかめる原因を知る者はいませんでした。



しかし今ではなんとなくわかるような気がいたします。
私も今、その先生と同じようなことをしているのでございます。
自分が過去に犯した臍をかむような失敗
悔やんでも悔やんでも悔やみきれない過ち
穴があったら入りたいような恥ずかしい所業……
そんな記憶が不意によみがえり、私を責め立て
その結果、大切な仕事や用事の最中に
顔をクシャクシャにしかめてしまう。
そんなことが近頃とみに多くなりました。



あの時こうすれば良かったと、自分なりに解決をし
決着やケリを付けていればそんなこともなくなりましょうが
いずれの苦い過去も、私は現在に至るまで引きずっております。
あの数学の先生も私と同様、苦い過去を引きずっていて
何かの拍子にそのことを思い出し、顔をしかめていたのではないか。
私にはそんな気がいたします。



それはともかく、誰も居ないところならまだしも
人前で、それもお客様の前で苦虫を噛み潰したような顔を見せるのは
失礼でしょうし、下手をすればお客様の気分を害して
大切な商談がお流れになってしまいましょう。
そこで私、そんなときはとっさに目をつぶるようにしております。
そうすれば、少なくとも私の苦虫顔がお客様に向かっているのではない
ということが理解していただけると思うからでございます。



もっとも、そんなふうに目を閉じると
今度は中年男が何かイヤラシイ快感によがっているような
変態顔に見えないか、チョット心配ではございますが.....






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