おもてなし




お目汚し、失礼いたします。



数年前のことでございます。
某中華料理チェーン店のカウンター席で
食事をしていたのでございますが
隣に腰掛けている年老いた男性が食事を終えたあと
ちょうどカウンター席の向こう側にいた店員に声をかけました。



声をかけられた若い男性店員と老人は何か話し込んでおりましたが
二人とも声が低く、また周囲の喧騒のせいで
会話の内容がほとんど聞こえません。
約一分ぐらいのあいだ話をした後、老人は立ち去って行きましたが
それを見届けた店員は踵を返すと厨房の奥の方に走っていきました。



そのまま私が食事を続けていたところ
やがてさっきの店員が店長らしき男性とともにやってきました。
店長と思しき男性は、老人との会話の内容、そのときの状況や相手の表情を
ひとつひとつ店員に尋ね、かつ確認しておりました。



詳しいことは存じませんが
どうやら老人はこの店にとってはいわゆる「 VIP 」であり
お忍びで店を訪れていたようでございます。
その店は、どちらかといえば安くて美味しい大衆向け中華料理店
というイメージなのですが、このときばかりは
どこか高級料亭のような雰囲気を垣間見たような気がいたしました。



まぁ大手の外食チェーン店に限らず
なじみの上得意様や経営面でお世話になった関係者
あるいは自分の社の重鎮に対して
特に気を遣ったり応対に神経を尖らせたりするのは
商売人やビジネスマンとして当然のことでございましょう。
もちろん、そうでないお客様に対しても
しかるべき「 おもてなし 」をすることは常識でございます。
しかし私はこれより以前、別の中華料理店で
まったく違ったふいんきを味わったことがございまして
その経験から、この中華料理店が奥ゆかしく思えたのかもしれません。



で、その「 別の中華料理店 」でございますが
そこは大手チェーン店ではないものの店内は結構広く
従業員もその広さに見合った数だけ、居ました。
しかし全員、なぜかカウンターの向こうの厨房に陣取って
業務とは無関係な雑談を大声で交わしており
いわゆるホールスタッフが一人も居ません。



味はまぁまぁだったのでございますが
なんとなく店内にすさんだ空気が漂っており
客の数もまばらでございます。
厨房にいたDQN度がひときわ高そうなコックなどは
今にも中華包丁でジャグリングをおっぱじめそうな
あぶない感じがいたしました。
従業員は一応、日本語を喋っているようでしたが
なかには「 カネカネ、キンコ 」しか喋れない者がいたかもしれません。



もう20年以上も前のことで、今、この店がどうなっているか
あれから一度も行ったことがないため見当もつきませんが
最近はこういう店を見つけるほうがむしろ難しいくらいでございましょう。
とはいえ、希少価値があるからといって、そこで食べてみたいという気には
到底ならないわけでございますが.....






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