幻の成人式




お目汚し、失礼いたします。



本日は成人の日の祝日ということで
昨日から今日にかけて全国各地で成人の日の催しがおこなわれました。
以前ほどではございませんが、やはり今年も成人式の会場で
若者たちが傍若無人な振る舞いに及んで騒ぎ立てたケースも
いくつか有ったようでございます。



成人式といえば、未開の地に住む原住民の場合
成人となるための通過儀礼として
肉体的苦痛や命にかかわるような危険な行為を体験することが
不可欠となっている場合があるようですが
振り返ってわが国の場合、そのような峻厳なものとは程遠い
単なるイベントでございます。



かつて私が子供のころ、人間は誰しも二十歳ぐらいのころに
必ず盲腸炎すなわち虫垂炎を患うことになる。
そしてそのときは薬を使って抑えようとしたりせず
必ず手術しなければならないと親から言い含められ
その際に施される脊椎麻酔の痛さをおりに触れて聞かされておりました。



そのため私は、盲腸炎になれば手術は避けられず
一度診断が下ったなら、脊椎麻酔の痛みに耐えて
手術に臨まなければならないと覚悟しておりました。
そして子供ながらも、それが大人になるための通過儀礼だと
なんとなく思い込んでいたのでございます。



しかし実際のところ虫垂炎は誰しも罹る病ではございませんし
脊椎麻酔もそれほど痛いものではないということを
二十歳前後のころに薄々気づくようになりました。
盲腸炎の手術に対する恐怖は去り
気がつくと私は成人式の会場となっていた市民会館で
親に買ってもらったスーツを着て
市長の退屈な話をぼんやりと聞いていたのでございます。



盲腸炎の手術を受けるという
私にとっての成人式は幻でございました。
つらく苦しい体験をせずに済んだということからいえば
幻だったのはむしろ喜ぶべきことかもしれません。



しかしそれで本当に良かったのか、そのような過酷な体験を経ずして
世の中から大人として認めてもらっていいのかという一抹の違和感
そして盲腸炎の手術前に新人の看護婦さんがしてくれるという
「 剃毛 」を体験できなかったことへの激しい残念感が
未だに拭い切れないのもまた事実でございます.....






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