仄暗いノスタルジー




お目汚し、失礼いたします。



晴れた日の午後、街なかを歩いておりますと
ときおり営業しているのか廃業してしまったのか
判然としない店を見かけることがございます。
飲食店にしろ日用品の店にしろ建築関係の店にしろ
そういった店は、おおむね古びた外観のものが多いのですが
そんな店の中には、出入り口がガラス戸になっているものがございます。



営業しているのか廃業したのか分からないような店ですから
そのガラス戸から向こうは薄暗くて見えにくく
どんな間取りになっているか定かでない場合がございます。
非常に陰気な光景なのですが、私はこの光景になぜか惹かれます。



その暗い光景の中にどんな人間が住んでいるのか
それとも誰も住んでいないのか
そこではどんな生活が繰り広げられているのか
それともどんな生活が繰り広げられていたのか
想像はどんどん膨らみ
怪奇小説や幻想小説の中に登場する
不思議な場所のように思えてきて
あげくの果ては、そこが何やらタイムスリップの入口になっており
中に入れば今から何十年も過去に
自分がまだヨチヨチ歩きだった頃にまで戻れそうな気がいたします。



人間は自身が幼少の頃、特にまだ生まれてから間もない頃の体験は
ほとんど覚えていないものでございます。
それは体験自体が脳に記録されていないからかもしれませんが
本当は曖昧模糊とした記憶の闇の中に
確固として存在しているのではないでしょうか。
そしてもし存在しているのだとしたら
街なかで見かける仄暗いガラス戸の向こう側にいくと
その体験が甦ってくるような気がいたします。



もちろん妄想でございます。
50歳を越えてからというもの、郷愁を醸し出すものに対して
頓に心惹かれるようになってしまった私でございますが
さすがに、あのガラス戸の向こう側へフラフラと迷い込み
突然の闖入者に驚いている住人の前で バブ~ (・◎・) と
声を出すような真似はしたくはありません。
まぁ20年後、30年後はどうかわかりませんが.....






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