出世魚




お目汚し、失礼いたします。



つい最近、或る仕入先の担当者の男性と電話で話をいたしました。
商品の値段について問い合わせるために電話をしたのですが
( こんな安い商品の値段を訊いてどうするつもりなんだ )
という相手の腹の内が透けて見えるような物言いをされました。



こちらとしてはそれまで扱ったことの無い商品でございましたので
安いのか高いのかまったく値段の見当が付かず
それで訊ねざるを得なかったのでございますが
その担当者、「 けんもほろろ 」とはいかないまでも
何やら小馬鹿にしたような態度でございました。
まぁその仕入先からは日頃ほとんど商品を購入していなかったため
軽く見られていたのかもしれません。



私の店にその担当者が初めてやって来た
3年ほど前のときのことを思い出しました。
新入社員というには少し薹が立っているようで
たぶん中途採用者なのかもしれませんが
物腰は柔らかく、笑顔を絶やさず
決してこちらの神経を逆撫でするようなことは申しません。
特にディスるようなところは無かったのですが
今から思うと、どこか卑屈で目が笑っておらず
そして何よりパッと見が貧相でございました。



その貧相さは今も私の脳裏に焼き付いております。
それから何回か御機嫌伺いに来た後
彼はパッタリと私の店には来なくなりました。
こんな得意先に営業をかけても売り上げが上がらないと
判断したのでございましょう。



それから彼の勤めている会社へ
数回ほど用事で訪れることがございまして
そこで彼の姿をときたま見かけました。
当初の貧相さに全く変わりは無く
貧相さと言えば私も負けてはいないのでございますが
彼の貧相さにはそれを裏切る自信のようなものが
満ち溢れていたような気がいたしまして
そこが私と彼との違いでございました。



それからしばらく彼の姿や声を見聞きすることは無かったのですが
先日、冒頭で書いたような用件で電話をして
数ヶ月ぶりにその声を聞いた次第。
そこには私を小馬鹿にするような響きと同時に
ベテラン社員としてのプライドのようなものも感じられました。
随分と出世したものでございます。



ブリという魚、最初はツバスと呼ばれ
成長するにしたがってハマチ、メジロと名が変わり
最終的にブリという名前になりまする。
見た目はツバスでも中身はブリ。
そんな彼に、見た目も中身もツバスのままでいる私から
この場を借りて一言申し上げたいと存じます。



ちょっとベテランになったからって

ブリってるんじゃねぇーよ
( 涙 )
 






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