小さな花火




お目汚し、失礼いたします。



私が小学校低学年だったころの夏休みのことでございます。
お盆で帰省した両親とともに父親の実家に泊まっていた私は
夜、花火がしたくなって母親に花火をさせてくれと頼み込みました。



花火は昼間、子供向けの小さくて安全なものを
町の玩具屋で買ってきてあったのですが
そのとき、父親と祖父は用事で出かけていて不在でございました。
花火をするときは、大人がそばについていなくてはならないと
小学校の先生から言われておりましたので
父親の代わりにそばについていてくれと頼んだのでございますが
ちょうど母親も体調不良のため寝床で横になっており
しんどいからついていてやることができない。
今日は花火は我慢しなさいと断られました。



ところがこのときの私
とにかく無性に花火がしたかったのでダダをこね
見かねた祖母が「 私がついていてあげるよ 」と言ってくれました。
で、父の実家の庭で祖母と一緒に花火で遊び始めたのですが
ちょっとした手違いがございまして
花火の火が祖母の髪に燃え移ったのでございます。



祖母はあわてて火の点いた髪の毛を手で押さえつけ
バケツに汲んであった水を頭からかぶって火を消し止めました。
騒ぎに気づいた母親が、部屋の奥から出てきて事の次第を知り
ビックリいたしました。
そしてドラゴン花火のごとく激怒して私を叱り付けたのでございます。



ショボーンとなっている私を哀れに思ったのか
「 大丈夫じゃ、大丈夫じゃ。あたしゃ火傷はしとらんよ 」と
祖母はとりなしてくれましたが
母の怒りはなかなか収まりませんでした。
あれほど我慢しなさいと言ったのにどういうつもりかと
私、こっぴどく怒られたのでございます。
怒られながらも、祖母のとりなす声が
母の背後から聞こえていたのを覚えております。



当時は、母に大目玉を食らったという
悲しい思いしかございませんでしたが
今思い返してみると、あの時、母がどういう「 体調不良 」だったのか
なんとなく分かるような気がいたしますし
母があれほど私を激しく叱り付けたのは
すんでのところで姑に大火傷をさせるところだったという
嫁としての危機感が影響していたせいかもしれない
ということにも気づきました。



今日、偶然このときのことを思い出し
母と祖母に対して謝りたい衝動に駆られましたが
もはや二人とも私の謝罪を聞いてくれるような
身近なところにはおりません。
此度のお盆、母や祖母の墓前で謝っておくことにいたしましょう.....






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