就職戦線異常アリ 【 3/3 】




お目汚し、失礼いたします。



本来、面接官から質問される立場の学生が
面接官に対して厳しい口調で詰問するというのは
身の程をわきまえない極めてイタイタシイ行為でございます。



もちろん、面接官の方から「 何か質問は?」と促してきたら
質問してもよろしゅうございましょうが
それとて、就職を目的としたものでなければなりません。
企業の社会的責任をそんなところで追及するのは
筋違い、お門違いというものでございましょう。
そういう意味で、あの面接室から聞こえて来た声は
突拍子もない異常なものに感じられました。



けれどもあの日、面接試験を終えて帰宅した私は
ふと考えました。
常に面接官が主導権を握っている場において
逆に面接官に質問をするという行為は
面接を受ける側に対して多少なりとも主導権を付与し
有利になるという効果があるのではないか、と。



人とうまくコミュニケーションを取るのが苦手で
面接試験に自信が無かった私にとって
その発想は一筋の光明でございます。
今思えば大いなる勘違いでございますが
私はその手法を使って
面接試験を乗り切っていこうと考えました。
そしてそれ以後、就職活動で面接を受けた際に
答えにくい事や難しい事を面接官から訊かれたり
都合が悪くなったりしたときは
「 御質問の趣旨は何ですか 」とか
「 なぜそのようなことを訊ねるのですか 」とか
いささか「 不思議ちゃん 」のような質問で
面接官を煙に巻こうといたしました。



もちろん、詰問したり声を荒げたりはしませんでした。
しかし私の「 質問作戦 」は段々エスカレートしていき
「 そのネクタイはどこで買われましたか 」
「 御結婚はされているのですか 」
「 お子さんは何人いらっしゃいますか 」
「 奥様とはうまくいってますか 」
「 夜の生活は週に何回ですか 」
「 SMに興味はありますか 」というのも同然の
かなりズレた質問までするようになったのでございます。



面接官のかたは皆一様に
私のズレた質問をスルーしておりました。
キョトンとしたり、顔をしかめたりすることもありましたが
私に対して何か叱責をするわけではございません。
そのため、それはむしろ自分を個性的な逸材として
認めてくれているがゆえのリアクションなのだと
勝手に解釈した私は妙に自信満々となってしまい
全く危機感を覚えていませんでした。



その結果、私の就職戦線は連戦連敗でございまして
ようやく就職が決まったのは大学卒業が押し迫った頃でした。
さすがにその頃になると、「 こりゃアカンぞ 」と焦り始め
面接に際してオーソドックスなやり方で臨むようになり
どうにかこうにか、やっとこさ就職にありつけたのでございます。



若気の至りとはいえ、誤ったノウハウを愚かにも信じ込んだせいで
社会人としての第一歩を踏み出すための重要な時期の大半を
棒に振ってしまったわけでございますが、後悔はしております。
これから就活をしようというかた、また現に就活中のかた
どうか正しいノウハウを身に付け
後悔の無い就職活動をなさってくださいまし.....






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