年賀情




お目汚し、失礼いたします。



そろそろ郵便局で年賀状の受付が始まる時期でございます。
皆様、もう年賀状はお作りになられたでしょうか。
私、仕事上のお付き合いのある方への年賀状は
毎年、知り合いの印刷会社にお願いしておったのでございますが
来年の年賀状についてはとうとう自分で作ることにいたしました。
ネットで無料素材をダウンロードし、インクジェット用年賀はがきを買い込んで
宛名や文面、イラストをプリンタで印刷して作っておりまする。



年賀状といえば、若い頃に意中の女性へ宛てた年賀状のことを思い出します。
彼女は当時私が勤めていた会社のOLで、私とは別の部署に居た女性なのですが
社内にいる時、勤務中の用事で何回か話をしたことがございました。
ルックスは派手で、化粧もちょっと濃い目、エロさ満点の女性で
一目見たときから私は彼女の虜になってしまいました。



まだ20代前半だというのに、30代後半の色気がとろけ出ている彼女の顔や声は
見聞きするだけでカウパー氏腺分泌液が出てしまうほどでございまして
そんな彼女に対して私はそれとなくアプローチをかけていたのですが
まったく反応はございません。
それまで女性と付き合った経験など皆無な上に気弱だった私は
面と向かってポジティブな形でアプローチできないので
彼女が無反応なのも当然だったのでございます。



そんな私が暮れも押し詰まったある日、彼女あてに年賀状を書こうと思いつきました。
年賀状なら、ラブレターのような大上段に構えた文面でなくても
新年の挨拶に絡めて何かそれとなく彼女に伝えることができるだろう
と考えたのでございます。
しかも好都合だったのは、私が勤めていた会社では当時
社内間のコミュニケーションを良くするため、全社員の自宅の住所が記された名簿が
社員一人一人に配られておりました。今時の企業なら当たり前となっているような
個人情報についての厳しい管理がなされていなかったため
彼女の住所を知ることはきわめて容易だったのでございます。



しかし所詮、年賀状は年賀状でございます。
仕事の上での、それも時たま言葉を交わす程度の付き合いの人間に対して
新年の挨拶以外のことを書くのは不自然でございます。
あれこれと考えた挙句、結局、ありきたりの「 あけましておめでとう 」で終わってしまいました。
返信は来ませんでしたし、年が明けて最初に彼女と顔を合わせたときも
年賀状の「 ね 」の字も彼女のクチから出ることは無く
むしろ私を避けるような素振りがなんとなく感じられました。



そもそもプライベートは愚か仕事のときも、たまにしか会話をしない程度の付き合いの人間に
年賀状を出すこと自体、イタイタシイことでございましょう。
とはいえ、その程度の付き合いの人間がわざわざ年賀状を出してきているのだから
それ自体何らかのメッセージにはなる、ということも意識して私は年賀状を書いたのですが
彼女にそのメッセージが伝わったかどうか、今もって判然といたしません。



その会社を私が辞めてから30年近くになりますが
辞めてからはもう彼女への年賀状を書くことはございません。
今も年賀状を書いて出しているとしたら単なるストーカーでございましょう。
今はただ年賀状を書く代わりに、彼女の顔と声を思い出しながら
せっせとマスをかくばかりでございます.....






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