言えずのADVICE




お目汚し、失礼いたします。



社会人になって一年ほど経った頃
東京の方へ出張したことがございました。
そのとき、私と同期入社した社員で、東京支店に配属された男と
二人だけで一緒に飲みに行ったのでございますが
彼から人間関係の悩みを聞かされました。
上司とうまくいかないという、よくあるパターンでございます。



彼は真面目な男なのですが
どちらかというとノリが悪くてあまり冗談をいうタイプではなく
酒も一人で飲むのが好きな方でございます。
片や彼の上司は軽口やジョークが好きな男性だとのことで
そういった性格の違いから上司との関係が
ギクシャクしているようでございます。

「 肌が合わないんだよ 」

彼は酔って少し赤くなった顔をしかめ、吐き捨てるように申しました。



しかし私には何と言って彼を慰めればいいかわかりませんでした。
何しろ堅物な男でございます。
下手な慰めやアドバイスをすると怒り出すかもしれないのでございます。
現にそうして飲んでいる時も、つまらない冗談を言えば
軽蔑されるか無視されそうで、非常に居心地が悪ぅございました。



もっとも、彼を苦しめている悩み事の原因は
まさにそういった点にあるわけでございます。
そのため彼に何か慰めやアドバイスを与えるとすれば
まずその点を彼自身に自覚させ
彼の性格の長所でもあり短所でもあるその部分を
思いきって変えてみてはどうだと言うしかございません。



それに「 肌が合わない 」と申してはおりましたが
実際に上司と肌を合わせてみたわけでもございますまい。
意外と肌理が細かくて餅肌、スベスベとして気持ちが良い
ということもございましょう。
また、仮に肌の感触が合わなくとも穴と竿のサイズが絶妙で
ハメ具合が極上という場合もあるはずでございます。



しかし、私にはそのようなアドバイスをする勇気はございませんでした。
その夜の二人だけの飲み会は
まるでお通夜のような雰囲気のままお開きとなり
翌日出張先での仕事を終えた私は
彼とはそれっきり言葉を交わす間もなく本社へと戻ったのでございます。



それから数年後、風の便りで彼が会社を辞めたことを知りました。
あのとき、私が勇気を出して彼にアドバイスを与えていればと
今も悔やまれてなりません.....






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