金魚のくちづけ




お目汚し、失礼いたします。



虫歯になってしまいまして、このところずっと
歯科医のセンセイにお世話になっておるのですが
なかなか治療がはかどりません。
歯や歯茎が年のせいで弱っているからでしょうか
センセイは色々と手を尽くしてくださっているものの
遅々として治療が進まないのでございます。



男のセンセイでございますが、治療の状況を逐一報告してくださります。
センセイはそういった報告を元にして
私に治療方針を決めてもらおうとしているようですが
正直、「 虫歯を治してほしい 」ということ以外、私が望むことはございません。
インフォームド・コンセントでしょうかコンド~ムド・イノセントというのでしょうか
近頃は医療の現場において患者と細かい合意の上で治療を進める
というのが常識となっていて
医師も患者もアバウトな感覚で治療をしたり治療を受けたりというのは
憚られる傾向にございます。



わずらわしいことではございますが
医療行為というもののリスクを考えればいたしかたございません。
きちんとセンセイの説明を聞いてよく理解をしたうえで
こうしてくれ、ああしてくれとお願いしなければなりません。



それにしても私の虫歯、早く治ってもらいたいものでございます。
治療費もかさみますし、センセイのむずかしい説明を聞くのも正直、億劫です。
それともう一つ、歯科医院の受付のオネーチャンが気になって仕方ありません。
最近入って来た人でございまして、年齢は20代半ばと思われ
喋るときに唇を尖らせるような癖がありまして
それが私にいかがわしい妄想を抱かせるのでございます。



治療中、ともすればあのオネーチャンの顔が目の前にちらつき
その金魚のような唇に私のイチモツが
ツンツク、ツンツク、と軽くキスをされているような妄想に陥って
油断すると股間がズボンを押し上げてしまうのでございます。
そんなとき、センセイが「 はい、倒しますよー 」と言って椅子を寝かせたら
醜態がモロ分かりになってしまいましょう。
そうならないように、緊張して治療を受けているのですが
ただでさえ歯の治療で緊張している上に
そんなことでさらに緊張するなんて苦行もいいところでございます。



もっとも、いざ治療が終了し、あのオネーチャンに会えなくなるとしたら
それはそれでまた寂しいこととなりましょう。
そのときは私、駐車場かどこか安全な場所に停めたクルマの中で
リクライニングレバーに手をかけて座席を何度も倒し
あのときの妄想を反芻するのが日課になっているはずでございます.....






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