癒す動き




お目汚し、失礼いたします。



その夜、私はいつも行くドラッグストアではなく
ときどきにしか行かない、とある小さな薬局へと向かいました。
目的は二つあり、ひとつはのど飴を買うため
そしてもうひとつはその薬局の店員のオバサンを見るためでございます。



閉店間際の店内に入り、のど飴を一袋選ぶとオバサンがいるレジへ向かいました。
商品といっしょに、申し訳なさそうな態度で一万円札を差し出すと
白衣を着たオバサンはお釣りの千円札と硬貨を私の前で数えて確認してから
のど飴といっしょに私に渡してくれました。



御夫婦で営業しておられる薬局のようでしたが
奥様と思しきそのオバサン以外に店員の姿を見かけたことはございません。
ポッチャリとした小太りな体形で、私より少し年下と思われ
無表情ではありましたが、冷たい感じはしない女性でした。
いつも感情を露わにすることが無く淡々と応対をするその姿に、なぜか癒されるような気がいたしまして
ちょっとストレスを感じているときなどは私、その薬局へ行ってみるのでございます。
まぁ、ときどきしか行かないので、そのオバサンの別の顔を見たことが無いのかもしれませんが。



私が癒しを感じるのは、そのオバサンの淡々とした仕事ぶりだけではございません。
私が一万円札を渡したのは、わざとでございます。
実はそのオバサン、お釣りの千円札を数えるときに独特の動きを見せてくれまして
その姿にも癒されるのでございます。



どういう動きかと申しますと、まず私に向かって斜め45度に構えます。
そしてまるで手品師が「 さぁ、よく見てください 」と言うかのように
手元の千円札を私の方に向け、「 1、2、3、4、5…… 」と数えながら
その声に合わせて身体を上下に揺するのでございます。
そのリズミカルな動きは、アップテンポな曲を歌うロックミュージシャンのようでございまして
こちらまで体が上下に動いてしまいそうなのでございます。



オバサンのその独特な動きが見たくて、ときどきその薬局へ行くのですが
残念ながら、その日は見せてはくれませんで
腰から下が固まってしまっているかのような印象でした。
きっとそのときの私と同様、元気が無かったのかもしれません。



上下に身体を動かすことができないのなら
せめてメトロノームのように左右に身体を動かしながら
お釣りの千円札を数えてほしかったのでございますが、贅沢は申しますまい。
また今度、別の日に行ってみることにいたしましょう.....


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