神への落とし前




お目汚し、失礼いたします。



ちょうど一週間前、歯科医院の待合室で新聞の夕刊を見ておりましたら
父親にキスをする五歳の少年の写真が載っておりました。
昨年3月11日に起きた東北の大震災で妻を亡くした夫と
その息子の写真でございます。



少年は兄となるはずでございました。
母親のお腹には男の子が宿っていたのでございます。
身重のまま津波に呑まれた母親は
救出されたものの帰らぬ人となってしまったとのこと。
息子は、おはようの挨拶代わりに
父親に毎朝キスをするそうでございますが
もしかすると、母親や生まれてくるはずだった次男にも
キスをしているのかもしれません。



運命の残酷さや大自然の脅威というものは
到底人間には太刀打ちできないものでございましょう。
それらに対してあまりにも人間は無力でございます。
胸が締め付けられるような思いとともに
私は二人きりになってしまったこの親子に、幸あれと祈りました。



傷つき、疲れ果てた人々には癒しと救いが必要でございます。
それが最も大切なことであり、あの震災から遠く離れた場所にいる
私ごとき者があれこれ申すことはイタイタしくてお門違いだとは
重々承知しているのですが、あえて申し上げたい。



運命にしろ大自然にしろ神にしろ
どうしてあんなひどいことをしたのか
きちんとした理由を聞かせてもらいたいのでございます。
そしてそれを聞いた後で、こう言ってやりましょう。



絶対におまえの思い通りにはさせない。
このまま人間が黙って引っ込んでいると思ったら大間違いだ。
こんな所業をおこなったことを、必ず後悔させてやる。
いずれ落とし前はつけてやるからな、と。






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