>>> 越えられない壁 >>>




お目汚し、失礼いたします。



30代の初め、交際中だった女性とファッションホテルへ行ったことがございます。
週末の夜をHで楽しもうということで
夕食を終えたあと、車で都心に有る真新しいラブホへ参りました。



今でもそうなのかもしれませんが
そのホテルはフロントのパネルを見て気に入った部屋の番号のボタンを押し
その部屋に入るというシステムになっておりました。
週末ということもあって、ほぼ満室状態でございましたが
一つだけ空いている番号がありましたので、その番号のボタンを押してから
私たちは部屋へ向かったのでございます。



彼女も私もお互いに気心の知れた深い仲にまでなっておりましたので
変に興奮したり不安になったりということもなく
その日は楽しいオトナの夜を過ごせるはずだったのでございます。
ところが部屋に入って奥へ進んだとき、見たくないものと申しましょうか
見てはならないものが、二人の視界に入ってしまいました。



部屋の中央に大きなベッドがあったのでございますが
その上に、丸めたティッシュの塊がうず高く円錐形に盛り上がっていたのでございます。
それはまるで漫画やアニメに出てくるような、どでかいお灸のモグサでございました。
そのときの「 キャア━━━!」という彼女の悲鳴は今も忘れられません。
気持ち悪さと情けなさと腹立たしさに目まいを起こしそうになりながらも
私はその部屋の電話でフロントを呼び出し、部屋を替えてくれと頼みました。



ひょっとすると部屋を間違えたのではないかという自己不信も湧き上がり
ホテル側と大モメになるかもしれないと戦々恐々だったのでございますが

「 申し訳ございません。当方の手違いで
 まだルームメイクができていない部屋へ御案内してしまいました。
 つきましては直ちに替わりの部屋を御用意いたします 」

とのこと。ホッといたしました。



で、別の新しい部屋に入って「 さあ、始めるか~♪ 」とヤル気はマンマン
股間はビンビンになった私でございますが、彼女の方はなぜか押し黙り
ベッドの上に横たわってソッポを向いております。
私の方はチンポを剥いてすぐにでもヤリたかったのでございますが
虚ろな目で一言も喋らず、壊れた人形のように横たわっている彼女の姿は
とてもHをしたいという雰囲気ではございません。



これは私にはまったく理解不能の事態でございました。
さっきの部屋があんな状態だったのは、私が部屋を間違えたせいではなく
またホテル側もミスを認めて謝罪し、代わりの部屋に案内してくれたのでございます。
なぜ彼女は機嫌が悪いのだろうか。いったい何を怒っているのだろうか。
彼女が私を相手に粛々とハメハメをすることを拒む理由は奈辺にあるのだろうか……
何とも割り切れない思いと苦い空気を引きずったまま
結局、私たち二人は何もせずにそのホテルをあとにしたのでございます。



男性は目的優先、女性は気分優先と申します。
年を重ねることによって、ある程度の折り合いはつきましょうが
基本的にそれは変わらないものでございましょう。
あるいはお互いにまだオトナになりきっていなかったのかもしれません。
当時私は三十路になったばかり、彼女はまだ二十代でございました。



あのとき、硬くふさぎ込んでしまった彼女の心と股を柔らかく開かせるような
言葉や行動を生み出す知恵が私に有ったなら、と悔やまれてなりません。
しかし私がそんな知恵を持ち合わせておらず
またその知恵を生み出すための経験も乏しかったというのは
そのときの私自身の越えられない壁でございました。
そしてその壁は今もなお、私の前に立ちはだかっております.....






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