疲労大敵






お目汚し、失礼いたします。



ちょうど一ヶ月ほど前のことですが
仕入先の担当者が商品を納めに私の店にやってまいりました。
約2年ぶりに会う担当者でございます。
今ではもう仕事にも慣れているようで、適当に愛想笑いなどもできるようになっておりますが
2年前に初めて会ったときの彼はまだホヤホヤの新入社員でございまして
緊張していたのか表情も硬く、喋りもぎこちなかったと記憶しております。



その時、そんな彼の心中を察して私、リラックスさせようといくつか冗談を言ったのですが
彼はまるで無反応でした。
お恥ずかしい話ですがそのとき申した私の冗談
今どきの若い世代の琴線に触れるようなものとは程遠く
いわゆるオヤジギャグばかりだったのでございます。
何とか彼を笑わせようとしていた私
さりげなく冗談を連発したのですが全部スルーされてしまいました。
その日、彼が帰ってからひどく自己嫌悪に陥った私でございますが
自分も彼と似たような新人サラリーマンだったことを思い出し
まぁしょうがないかと忘れることにいたしました。



あれは30年ほど前だったでしょうか、私が社会人一年生だった頃
上司といっしょに得意先へ挨拶回りをしたことがございました。
お客様は運送関係の会社の社長でございまして、お年は60代後半だったかと存じます。
上司と二人、応接間でお会いしてお話しておったのでございますが
この社長が私の上司との会話の最後に一言、私に向かって笑いながら
「 お前の上司、本業は落語家とちゃうかぁ?」とおっしゃったのでございます。



ここが笑いどころだったのでございましょう。
しかし前日まで仕事に忙殺されていて寝不足になり疲れていた私は
その社長がおっしゃった冗談にまったく笑うことができませんでした。
しばらく三人とも沈黙しておりましたが、慌てて私の上司がわざとらしく笑いながら
私に( 空気嫁よ )といった視線を投げかけてきたのでございます。



しかしその視線がなおさら私の疲労感を増幅させ
私は無理やり笑おうとしたものの逆にあくびが出そうになり
ムンクの「 叫び 」のように口を開けたまま固まってしまって声も出せませんでした。
あくびを噛み殺しているのがバレバレで、その社長はあからさまに不愉快な表情を見せておりました。



このときの私と同様、2年前に初めて会ったあのとき、彼は疲れていたのかもしれません。
疲労というものは人間の肉体はもちろん、精神の働きを鈍くさせるものなのでございます。
しかし仮に疲れていなかったとしても、おそらく私の冗談に彼は決して笑わなかったでしょう。
それほど寒くて痛い冗談の連発だったのでございます.....





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