買い言葉に売り言葉






お目汚し、失礼いたします。



小学生の頃、当時私が住んでいた家から電車で一時間弱ぐらいの町に
球技用のグラウンドや遊具などを備え、木々や花壇を配した大きな公園がございました。
4月末から5月初めにかけての連休、まぁいわゆるゴールデンウイークのある日のことですが
私の地元の子ども会が催した遠足がございまして
数人の大人に引率されて同級生や下級生、上級生たちといっしょにその公園へ行き
鬼ごっこをしたり遊具で遊んだり芝生にレジャーシートを広げて弁当を食べたりいたしました。



おやつ時になったころ、「 探検 」と称して私は一人で公園内を歩き回っておりました。
そして太い木々が生い茂る森のようなところに平屋建ての売店を見かけた私は
何を売っているのだろうという好奇心からちょっと寄ってみることにいたしましたが
そのときの私、お札はもちろん小銭さえ持ち合わせておりません。
今もそうかもしれませんが、当時は小さな子供にお金を持たせることが
無駄遣いになるとか危険だとか何となく憚られる風潮がございました。
そのため私は何も買うことができなかったわけでございまして
売店に並んでいるものを見て回るだけのつもりだったのでございます。



売店にはショーケースに入った菓子パンや玩具などがございまして
店の中央には大きな箱が設えてありました。そこには冷たい水がなみなみと湛えられており
その水の中に何本ものジュースやコーラが入っております。
店員のおじさんが客の注文に応じてその水の中から飲み物のビンを取り出し
栓を抜いて渡すのですが
その箱の前に立った私、中に入っているコーラを見て
「 このコーラ、飲みたいなぁ 」と思わずつぶやいたのでございます。
すると店員のおじさんは「 坊や、これが欲しいのかい?」と言いながら
透き通った水の中に手を突っ込んでコーラのびんを取り出すと、勢いよく栓を抜いてしまいました。



一瞬のことでございました。
「 売り言葉に買い言葉 」という諺がございますが
この場合は「 買い言葉に売り言葉 」といったところでございましょうか。
まさかこんなことになるとは思わなかった私は、すっかり動揺してしまいました。
一円すら持ち合わせが無いので
栓が抜かれたコーラを買い取ることなどできないわけでございまして
私は飛び上がるようにしてその場を逃げ出しました。
「 オイコラ、お金お金!」と言いながらおじさんが追いかけてくるのではないかと怯え
後ろを振り返らずに一目散で逃げましたが、誰も追いかけてくることは無く
結局トラブルになることはございませんでした。



この経験によって、物の売り買いに関しては言葉を慎重に選ばなければならない
ということを私は学びました。
「 口は災いの元 」だというわけでございます。
そのため済んでのところで散財や大損を防げたことがよくありましたが
逆に掘り出し物やお買い得品をみすみす逃してしまうことも多々ございました。
しかしそれでも私は自分の信条を変えず、慎重な態度を維持し続けまして
やがてそれは物の売り買いばかりでなく、生活態度全般にまで及ぶようになり
その結果、優柔不断な性格が身に染み付いてしまったのでございます。



生まれて初めて女性とHをしたときも、結局のところ生尺でイカせてもらうにとどめた次第。
それが良くなかったのでしょうか。
魅力的な女性でしたが、彼女との縁はそれっきりプッツリと途切れてしまいました。
やはり「 口は災いの元 」なのかもしれません.....





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