魔夏の午後の夢

魔夏の午後の夢





お目汚し、失礼いたします。



高温災害ともいえるような異常な暑さも影を潜めた今日この頃
皆様、いかがお過ごしでしょうか。
此度のキチガイじみた暑さによって熱中症や脱水症で毎日のように人が亡くなった
というのもたしかに異常ですが、日常生活に直接関係してくる「 気温 」という身近な数値
この数値が40度を超えてしまう、あるいは40度近い日が何日も続くということの方が
むしろ異常性をよりいっそうリアルに感じるものでございます。



なぜこのような高温となってしまったのでございましょうか。
地球温暖化による異常気象なのか
それともここ数年来、日本列島を揺さぶっている地震の頻発と何か関係があるのか
定かではございませんが
この異常なる高温、何らかの異常なるものの影響によって引き起こされたのは
間違いないような気がいたします。
そしてまた異常な高温による影響は、異常なることを引き起こす原因にもなるものでございまして
特に人間というものは、とりわけ私のような変人・変わり者の類は
その影響をもっとも受けやすい生き物なのでございます。



そんな異常に暑い日、先月のことでございました。
お客様に御自宅で会う約束をしておりました私
運転していた車をコインパーキングに入れると
そこから徒歩で15分ほどの場所を目指して歩き始めました。
お客様の御自宅は狭い道が連なる裏通りに面しておりまして
私の乗っている小さな車でさえ駐車が困難なところに位置しているのでございます。



地面から陽炎が立ち昇っていそうな熱い道で、汗を拭きながら私は歩を進めておりました。
そこは住宅地でございましたが、2階以上の建物が少なく日陰があまりございません。
5分と歩かないうちに激しく重苦しい暑さと
地面や壁面の眩しい照り返しで頭がクラクラとしてまいりました。
時刻は午後の2時頃。
相手がお客様とはいえ、なぜこんな時間帯を指定されたのかと
頭の中に恨み言が沸々と湧いてまいりました。
汗がアンダーウエアを上下ともベッタリと濡らし尽くし、鬱陶しくて仕方ありません。
額からは雨粒のようにポロポロと汗が零れ落ちてまいりまして
頭頂部を手で撫でると汗でベチャベチャいたします。
あまりの気持ち悪さに、いっそのこと服を脱いで全裸になってしまおうかと思いました。



折しもその場には私以外誰もおりません。
左右に並ぶ裏通りに人の気配はなく
灰色をしたエアコンの室外機が煮えたぎった空気を追い炊きするように
熱風を吐き出しているだけでございます。
住人は皆、快適な温度に満たされた屋内に引きこもっているのでございましょう。
どの家も窓はカーテンやブラインド、葦簀などで陽射しを遮るようにしておりまして
外の景色は見えない、もしくは見えにくくなっております。
そのことに気づくと、全裸になるという思いつきはにわかにリアルさを増してまいりました。



この日、天気予報によれば最高気温は38度になるとのことで
業火が君臨するようなそんな昼日中に外へ出歩く者などいるはずもありますまい。
静まった住宅街からは人の気配が完全に消え失せており
今なら30秒ぐらいは全裸になっていても大丈夫。
そう確信した私は、着ていたワイシャツのボタンに手をかけました。
すると何やら急に胸の鼓動が高まり、それは上半身から下半身へと広がって私の股間にまで伝わり
熱せられた餅のようにイチモツがムクムクと隆起してきたのでございます。



ふと何気なく顔を上げると、少し離れた場所にタワーマンションと思しき高層ビルが見えました。
もし私が今ここで全裸になっても、そこの住人からは見えないはずでございましょうが
中には双眼鏡や望遠鏡で近隣の様子を覗き見るような悪趣味の持ち主がいる可能性もあり
そんな物好きがたまたまレンズをこちらに向け、素っ裸でチンコ丸出しのオッサンを見つけるかもしれません。
ところが、逆にそんな「 見られてしまうかもしれない 」という意識によって
むしろ私の股間の餅はますます隆々としてまいりました。
そして私は掻きむしるようにして胸元のボタンを外したのでございます。



そのときでした。
私の前方、数メートルのところを何か白いものが流れて行き、私はゾッとしました。
自分以外誰もいないところで何か得体の知れないものが動いたので
本能的な恐怖で悲鳴を上げそうになったのでございます。
白いものは路肩に停めてあった原付バイクの陰に流れ込むと
凍りついたように立ちすくんでいる私の方へ、おずおずと顔を覗かせました。
猫でございます。



ホッとすると同時に私は我に返り、はだけた胸元から手を離しました。
すんでのところで私、スタンダードな露出狂の変質者と化すところだったのでございます。
これからお客様との商談を控えているというのに、まったくなんということを……。
よく見ると周囲に身を隠す場所などまったく無く
もし全裸になったあとで、通りすがりや住宅の中から出て来た人と出くわしてしまっていたら
顔を見られないようにうつむき、竿と玉を勢いよく上下左右に振りながら
全速力でその場から走り去る以外、なすスベはございません。



気を取り直し、外したボタンを元通りに留めると頭や顔、両腕の汗をきれいに拭った私は
再びお客様の御自宅めざして歩き始めました。
股間の餅はすっかり萎んでおりましたが
しかしこの魔的・病的・狂的な暑さが、いつまた私を妄想・幻覚・錯乱へと引きずり込むか
知れたものではございません。
ひっきりなしに流れる汗を拭いながら、私はお客様との面会を急ぐべく
太陽光線と熱気に圧せられた、呼吸もままならないような狭い通りを
足早に歩いた次第でございます.....





                                       プロフィール画像2015圧縮前→fg→圧縮→jpg→FC2画像圧縮20150929

コメント

非公開コメント