微笑む勇気






お目汚し、失礼いたします。



昨日は七夕でございまして
天気が雨模様ではなかったため心置きなく夜空を見ることができる状態でしたが
あいにく私の家からは雲が邪魔をして鮮明な星空を見ることは叶いませんでした。
その代わり日中は、やや暑かったものの梅雨の晴れ間ということで
何やら明るく爽やかな日曜日でございました。



そんな日曜日の朝、自宅近所の歩道を歩いておりましたら
ベビーカーに1歳ぐらいの子供を乗せた母親が向こうからやってくるのを見かけました。
元気な男の子でございまして、ベビーカーから飛び上がろうとするかのように
身体を上下に揺すっております。
ヤンチャそうなその仕草とつぶらな瞳が可愛かったので
私は思わず微笑みかけそうになりましたが、ハッとして即座に顔を強張らせました。



それより三ヶ月ほど前のことでございます。
仕事先へと車で向かっている途中、尿意を催してきた私は
手近にあったコンビニの駐車場へ車を停め、店内のトイレへ駆け込みました。
あいにくトイレは便座が壊れていたため、私は便座を片手で持ち上げながら用を足すという
窮屈なポーズを強いられたのですが、どうにか尿意を満たしてトイレから出たところ
2歳ぐらいの女の子を連れた若い母親を見かけました。



無事に用を足すことができたという安心感と
片言で何か喋りながら母親にじゃれつく女の子の可愛らしさから私
母親と女の子に向かってニッコリ微笑んでおりました。
しかし母親はそんな私に向かって険しい顔をしながら
女の子を自分の方にさりげなく抱き寄せるのでございます。
私の容姿がイケメンでも癒し系中年でもないのは百も承知なのですが
母親のあまりの露骨な態度に違和感を覚えました。



腑に落ちないものを感じながら車の方へ戻ったとき
フェンダーミラーに映った自分の姿を見て謎が解けました。
さっきトイレで用を足したあと
うっかりズボンのファスナーを上げずに出て来てしまっていたのです。
そんな男がトイレから出てくるなり、母娘に向かってニタァ~と笑いかければ
警戒されるのも無理はございません。



そして、一ヶ月ほど前にはこんなこともございました。
ディスカウントショップで買い物をしていたとき何気なく店内の商品を見て回っておりましたら
生後間もない赤ん坊を抱いたお年寄りがすぐそばを歩いておられました。
むずかりもせずスヤスヤとおじいさんに抱かれて眠っている赤ちゃんは
まさしく平穏と安寧の象徴のようでございまして
私は口元をほころばせながら首を伸ばして赤ちゃんの顔をもっとよく見ようとしたのですが
その子を抱いた御老人は途端に目を伏せながら
あからさまに私から遠ざかって行ったのでございます。



何か失礼なことでもやらかしたのだろうかと心配になったのですが
そこはホラー系パーティーグッズのコーナーでございまして
ジェイソン・ボーヒーズのホッケーマスクとか
ブツ切りにされた手首のオモチャなどが陳列されている場所でございます。
折悪しく私はフレディ・クルーガーの鉄の爪を何気なく手に取っておりまして
これでは敬遠されるのも無理は無いと一抹の悲しさを感じながらも納得した次第。



そういったことが心の底にひっかかっていたため
ベビーカーの男の子に向かって微笑もうとしていた私の顔は
急激なエンジンブレーキがかかったかのようにフッと固まってしまったのでございます。
石膏でできた仮面のように粉っぽく無表情な顔をしているであろう私の横を
母親とベビーカーはゆっくりと通り過ぎていきました。



理不尽な事件・事故が目立つ今日この頃、幸せな気分になったことを表現するにも
これからはタイミングや空気を読まなければならないのかもしれません。
しかしタイミングや空気を読みながら表現する幸福感はもはや幸福感とは言えないでしょう。
今の世の中、幸せを味わうにはタイミングや空気を無視する勇気が必要なのでございます.....





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