あと出し審判




お目汚し、失礼いたします。



ロンドンオリンピックがにぎにぎしく開催されておりますが
今回のオリンピック、なにかとハプニング続出のようでございます。



開会式においてインドの選手団の中に部外者の女性がまぎれ込んで行進していたり
日本選手団が誘導ミスで開会式から退場させられてしまったり
朝鮮の国旗が南と北でテレコに表示されたり
フェンシングの競技場で妖怪「 泣き女 」が座りこんだり、開会式にUFOが現れたりと
何やら都市伝説の様相を呈するまでにいたっておりまする。



また今大会においては、審判の誤審が目立って多いような印象がございます。
いいかげんな審判のおかげで、わが国の体操や柔道の選手が
後味の悪い思いをさせられたのは周知のところでございますが
世界的なスポーツの祭典だというのに、なんというお粗末な有様でございましょう。



私は殊更オリンピックに入れ込んでいるわけではございませんし
正直、日本選手がどんな色のメダルをいくつ獲得しようが
あまり興味はないのでございますが
あの審判の体たらくは、さすがにイライラしてまいります。
日本に限らずどの国の選手も懸命に練習に励み
晴れの桧舞台たるオリンピックで真剣に競技にのぞんでいるというのに
あんな頼りない審判では競技に集中できますまい。



……とまぁ、エラソーなことを書いてしまいましたが
実を申しますと私、審判については忸怩たる体験がございます。



私が高校生のころ、体育の授業において男子生徒同士で
サッカーの試合をやることになったのでございますが
試合が始まってまもなく、審判役を務めていた体育の担任教師が
とつぜん急用のために出かけなければならなくなり
たまたま手近な場所に立っていた私に向かって
「 おまえ、審判をしてくれ。おれはちょっと用事で出かけなきゃならんから 」
と言い置いて立ち去ってしまったのでございます。



何やら火急の用事だったらしく
体育の教師は私に詳しい説明や具体的な指示は一切せず
審判用のホイッスルを私に押し付けると
あわてて校舎の方へ走り去っていきました。
しかし、もっとあわてたのは誰あろう私でございます。
どちらかといえば体育の授業は苦手で
サッカーのルールなどまるっきり理解できておらず
おまけにヒゲ面のいかつい体育教師のオッサンが
さっきまで口に含んでいたホイッスルを使わなければならないのでございます。



困惑しながらも、私は身に着けているジャージの端で
ホイッスルを念入りに拭いて口に咥えると
グラウンドでサッカーボールを追いかけるクラスメートたちといっしょに
走り始めたのでございますが
担任教師がいないこともあって、生徒たちの間にはダレた雰囲気が立ち込め
試合とは名ばかりの馴れ合い、じゃれ合い、ふざけ合い。
そんな彼らが

「 今のはハンドだろ 」
「 オフサイド、オフサイド!」
「 キーパーチャージ! 反則だぞ!」

という声を発するのに合わせて適当に笛を吹くという
「 あと出しジャンケン 」ならぬ「 あと出し審判 」によって
どうにかお茶を濁しておりました。



さいわい、私以外の生徒はサッカーのルールを熟知していた者がほとんどでしたので
笛を吹いたあとは、あえて私が指示を出さずとも粛々とゲームは進んでいきましたが
もし誤審があったり、私の審判に抗議を唱える者が現れてモメたりすると
困ったことになります。
そのときは笑って誤魔化そうと思っていたのでございますが
運良くそのような事態にはなりませんでした。



これはひとえに、そのときの試合がグダグダだったおかげでございます。
オリンピックの審判員も、そのようなグダグダの試合や競技ならば楽でございましょうが
そうなるともはやオリンピックのオリンピックたる価値はなくなってしまいましょう。
それだけシビアなものが、オリンピックの審判員には求められているわけでございまして
今大会の審判員の誤審のニュースを見聞きするたびに
腹立ちを感じると同時に、ちょっぴり同情もする次第でございます.....






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