The Personator






お目汚し、失礼いたします。



昨年、師走の下旬にスマホの機種変更をいたしました。
年末が近いこともありショップはたいそう混んでおりまして
店内のソファーに腰かけて受付の順番が来るのを待っていたところ
隣に腰かけている老婦人の客にゆっくりと近付いて来る者がおります。
誰かと思って目を向けると紺色のスーツを着た30代ぐらいの男性でございます。
何だショップの店員かと思って見ておりますとその男、老婦人に向かって声をかけました。



「 今日はどんな御用でしょうか 」



スマホをいじっていた60代後半と思しきその御婦人は
「 ○件のアップデートがあります 」という表示が出ているが
これはどういうことなのか、どうすればいいのか教えてほしいと申しております。
店員はデジタル・デバイド著しいその御婦人にWi-Fiやケーブル接続やアカウントといった用語を
噛んで含めるようにして説明し、何をどうすればいいかを手取り足取り教えておりましたが
そのあまりにも懇切丁寧な対応にかえって怪しく思えてきて本当に店員なのか
店員を装った詐欺師ではないかとさえ思えてきました。



昭和の時代の話になってしまいますが、社会人になりたての頃
勤めていた会社の上司や先輩、両親や親戚から言い聞かされたことを思い出しました。
これからは大人として結婚式や葬式に参列したり手伝いをしたりという機会もあるだろうが
そういった場では式場の人間になりすまして祝儀や香典を盗むヤツがいるから気をつけろと。
もっとも、今では一昔前と比べて結婚式も葬式もごくごく身内だけで済ますことが多く
また喪主や遺族が香典の受け取りを辞退するケースも増えており
式場の人間になりすますという手口の盗みは滅多に起きないようでございます。



ましてここはセキュリティに厳しいケータイのショップ。
老婦人に話しかけている店員が偽者だということはまず考えられないのでございますが
ショップ店員は男女とも制服ではなくありふれたスーツを着ておりまして
年の瀬の押し迫った時期で店内では人々が慌ただしく会話を交わしており
店員か客か区別できない者もおります。
もしここへ、昭和の昔のころに結婚式や葬式を荒らし回っていたプロの「 なりすまし窃盗犯 」の男が
タイムスリップして降り立ったとしたらどうでしょう。



映画「 ターミネーター 」のごとく全裸で現れたその男は手近な紳士服店に忍び込んでスーツを盗み
まんまとケータイのショップに店員として紛れ込むでしょう。
そして老婦人に近づき言葉巧みにたぶらかすのでございます。
何しろ男は昭和の人間。60代の女性を喜ばせる話題には事欠きません。
まんまと男に籠絡された御婦人は男を自宅まで案内し、さらに茶飲み話に花が咲き
やがて夕食まで御馳走になった男は老婦人を抱いてベッドイン。
昭和ならでわのテクニックで婦人にノスタルジックな絶頂を迎えさせ
随喜の涙を流しながら失神した老婦人を尻目にタンスの引き出しから通帳やハンコ、現金を持ち出し
そのまま全裸で逃走すると再びタイムスリップして昭和の時代に帰還するのでございます。



令和の時代の通帳やハンコや現金が昭和で使えるのかということよりも
私はその老婦人の貞操の危機の方が気になってしかたありませんでした。
本当にショップの店員なのかハラハラしながら二人の方を見守っておりましたが
男は話が一段落すると店のカウンターの向こう側に行き、店長らしき中年男性と話をしております。
なんだやっぱり店員だったんだとホッと胸をなでおろした私
老婦人のことはすっかり忘れて別の男性店員に粛々と機種変更をしてもらいましたが
今、新たな疑惑に頭を悩ませております。



すなわち店長以下ショップの店員が全員、偽者だったのではないかという疑惑でございまして
私の貞操や尻の穴こそ無事だったものの果たして私が今使っているスマホは本物なのかどうか
どこか別のショップで調べてもらおうかどうするか今、迷っているところでございます.....






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